医療ジャーナリスト 田辺功

メニューボタン

田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年12月2日

(39)医療再生論文の授賞式

 神奈川県保険医協会が募集した「日本医療再生の懸賞論文」授賞式が先月30日夜、横浜の崎陽軒で行われ、私も出席しました。いえ、私が論文を書いたわけではなく、審査員の1人だった関係からです。
 同協会は神奈川県内で開業する医師、歯科医師の団体で会員は約6000人とのこと。創立50年事業として、医療崩壊の危機からいかに立ち直るかという論文を全国から募集しました。入選が福井県高浜町の国民健康保険和田診療所医師の井階友貴さん(32)、佳作は沖縄県中部病院経営アドバイザーの藤井将志さん (30) でした。また、残る作品の中から「捨てがたい」として、特別に設けた審査委員長賞 2件が選ばれました。全員が神奈川県外の人、しかも 4件のうち 3件 3人が30代という意外な結果になりました。
人口1万1000人の高浜町も医師が減り、危機的な状況でした。井階さんは医師よりも住民が医療の中心であるべきと考え、医療に関心のある住民で「たかはま地域医療サポーターの会」を結成しました。この会は「か」から始まる、医療に対する五か条を住民に伝えました。
 ➀関心を持つ ➁かかりつけを持つ ➂からだ作りに取り組む ➃学生教育に協力 ➄感謝の気持ちを伝える、です。そうして議論し、会を企画し、ポスターやビデオで訴えました。学生教育は、福井大学医学部に協力、研修医や学生を受け入れ、地域医療に関心を持つプライマリー医に育ってもらおうというのです。こうした取り組みが功を奏し、住民の関心は高まり、勤務してくれる医師も増えたというのです。国の貧しい医療政策で、医療関係者はヘトヘト、住民は注文し、文句をいうだけ、ではない関係が、医療を再生しつつあるというのです。すばらしいことではありませんか。
 佳作の藤井さんは少子高齢社会の転換のため、高齢者の資産の活用を訴えました。そのうえ、事実上、病院の事務局で働く立場から感じた医療制度の改善を提言しています。医師や看護師でない視線からが新鮮でした。
 私も、こうした30代の皆さんに負けず、次代の日本の医療をどうすべきかを考えたい、と思いました。

トップへ戻る