田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(395)30年以上も続く福島原発の危険
津波が押し寄せ、家や車を流す衝撃的な画像から満10年が経ちました。テレビや新聞で家族を失った人たちの思いを聞いていると胸が詰まります。ずいぶんと涙もろくなったなあ、との実感があります。
東日本大震災のもう 1つの悲劇は原子力発電所の事故です。福島第一原発の冷却装置が機能を失い、水素爆発や高温核燃料で原子炉が破損しました。原発最悪の事故です。常時水で冷やし、最終的には核燃料を取り出さなければなりませんが、一番手間取っている1号機は2051年の完了予定がさらに遅れそうといわれています。不測の事態で爆発し、高濃度の放射能汚染の危険性が何とまだ30年以上も続くというのです。ドイツなど欧米では脱原発の動きが急速に高まりました。
そんな折り、政府は原発復権を画策しているとの記事 ( 3月 7日付け『朝日新聞』) が目を引きました。「エネルギー基本計画」の改定を検討する経済産業省の審議会はもともと原発推進派の委員が多いのですが、昨年末の会議では原発の新増設を求める意見が相次いだそうです。翌日の同紙には日本原子力発電と関西電力が2018年から21年度、敦賀市に15億円の市道整備費を寄付したとの記事が載りました。2013年までの寄付は市の公文書に記載されていましたが、18年以降は記載されなくなりました。
敦賀市はこれまで原発のおかげで多くの寄付金を得てきましたが、福島の事故にもかかわらず、市当局は原発の安全を確信しているのでしょう。審議会委員たちも同様です。あるいは電力会社の接待などがあるのかも知れません。
手元に船橋洋一氏のシンクタンクがまとめた『福島原発事故10年検証委員会民間事故調最終報告書』があります。東京電力の経営陣は、敷地の高さを超える津波の可能性を示唆した報告を現実性がないと無視したとして事故後に問題視されました。報告書は「現場の技術判断を正当な理由なく経営判断で却下してはならない」と強調、同社のそうした傾向や、上意下達、根回しなどの体質も是正されていない、と指摘しています。