田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(393)接待なんて当たり前でしょうが
昔から何にも変わってないなあ、が新聞紙面を見ながらの感想です。同じような構成の記事が毎日のように続きます。菅義偉首相の息子さんに絡む総務省幹部の処分、そして元農水相の贈収賄事件に関連の農水省幹部の処分。表向きはないことになっている企業の官僚接待がまさに日本の文化の中枢に生き続けています。
私が現役の頃、政治部や経済部の記者は、毎日のように政治家や財界人、企業、官僚と飲み歩いていました。有利な扱いを求めての接待は当たり前。記者の多くもそれに加担していました。米国の大学の研究者が、ご馳走になれる上限額を超えるからと安い食事を注文し直したので驚いたこともあります。日本は欧米とは違う、と主張していた政治家や官僚も国際的な世論や事件に押され、仕方なく、欧米同様の倫理規程を作らざるを得なくなってしまいました。
それがきちんと守られているはずがありません。首相の息子がいたので断れなかった官僚が、首相本人や自民党幹部や大金持ちや著名人の席を断れるのでしょうか。現に農水省幹部は農水相と同席でしたが、副大臣や農水系の有力議員だったら断った、とも思えません。お金を払う業者さえいれば十分です。それに、コース料理をどうやったら牛丼並の値段だと錯覚できるかも不思議です。
見かけは欧米そっくりでも中身は骨抜き、といった法律や規程は少なくありません。担当官庁がその当事者に内部告発者を教えた事件への対応から公益通報者保護法ができましたが、名指しでなくても特定しやすい情報を教えるようなケースがしばしばあります。最近、一流企業の製品検査のいい加減さが明らかになっていますが、知っていても通報しないのが日本の企業人の常識なのでしょう。
また、業者の受注時の談合は禁止されているはずが、日常的に行われています。政治資金規制法の違反も収賄も政治家が「秘書まかせで私はまったく知らなかった」といえばそれで済むようになっています。どこまでが日本的、なのかはよく分かりませんけれど。