医療ジャーナリスト 田辺功

メニューボタン

田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年10月26日

(377)高齢者の面会は緩和すべきですね

 高齢者施設や医療機関での面会制限緩和はうれしいニュースでした。10月13日に厚生労働省の専門家組織が方向転換を打ち出した、と翌日付けの新聞各紙が伝えました。家内の父の弟の奥さん (おば) が奈良の特別養護老人ホームに入居しています。新型コロナが流行してからもう何カ月もホームは面会禁止になっています。
 おばは認知症が少しずつ進んでいて、面会中も、分かっていないようなおかしな反応を示す時もありました。元々、積極的に話したりするほうではなく、最近は自分の部屋で眠っていることが多い、と聞いていて、家内は心配していました。
 面会、それに外出もなくなることで、施設の高齢入居者の運動能力や認知機能が落ちるのは当然です。歩行がおぼつかなくなり、トイレ時などに転倒すると大変です。おばも転倒・骨折でいつからか車イス生活になり、認知機能低下が進みました。
 具合の悪い家族がわざわざ遠くから来るはずはなく、面会前の手指消毒、マスク着用、面会後の消毒などでコロナ感染は十分防げるはずです。ただし、消毒などで手間がかかるうえ、 100%完全はありません。感染すれば管理者の責任になるなら、面会などを規制したほうが無難です。政府の制限なら堂々と張り出せます。
 9月初め、コロナで亡くなった広島県の82歳女性患者の家族が損害賠償請求訴訟を起こしたのには驚きました。コロナを疑わせる症状があったホームヘルパーから感染したとして、派遣した訪問介護事業所を訴えたものです。ヘルパーがコロナをわざと移したわけはないし、訪問介護で家族は助かっているはずです。訴訟はその後、取り下げられたとのことですが、もやもやが残ります。
 そういえば、長野県の特別養護老人ホームで、入所者の85歳女性がドーナツで窒息死した2013年の刑事事件で、 1審で罰金判決を受けていた看護師が、今年 7月の 2審で無罪になったとのニュースもありました。検察も介護を厳しく見張っている感じです。
 実際に介護をしてみると、見落とし、気づかない危険がたくさんあり、運不運が隣り合っています。完璧を求められるなら高齢者には近づかないのが一番です。

トップへ戻る