医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年11月19日

(37)徳洲会の選挙違反事件

 このところ、医療法人徳洲会の選挙違反が大きな話題になっています。そうした話を初めて聞く人も多いでしょうが、実は病院職員を動員しての選挙運動はもう20年も前から続いています。私はちょっと懐かしい思いで記事を見ています。朝日新聞時代の1984年秋、私も批判記事を書きました。内部告発があったのです。
 最初は大阪府の八尾徳洲会病院の看護師数のごまかしでした。基準に足りないのにグループ内の別病院の看護師が勤務していることにして、割り増し看護料を得ていました。このために看護師の勤務日誌をすべて作り直していました。
 2弾目は宇治徳洲会病院の開設時、看護師の絶対数が足りなかったのを、やはり別病院の看護師が勤務することにし、免許証のコピーを提出しました。病院は都道府県認可なので、県が別であればチェックされなかったからです。看護師不足のころ、発展初期のグループは次々に病院をオープンするのに無理を重ねていたのです。
 グループを率いた徳田虎雄さんは前年の総選挙に鹿児島県の奄美選挙区から初めて立候補し、惜敗しました。この時から病院ぐるみの激しい選挙運動が始まりました。実は、3弾目の予定が病院ぐるみ選挙のくわしい実態でした。ところが、当時の新聞社内の徳田さんの心酔者が編集局幹部に掛け合い、3弾目以降は突然、中止になりました。看護師の名義借りも結局はうやむやです。
 実は、今回の新聞報道と、昔の取材内容はほぼ同じです。違うのは、妹さんらの身内は選挙にあまり顔を出さず、病院からのピンハネもなかったことだけです。
 徳洲会の選挙運動はその後、何度も小さな雑誌で書かれ、関係業界では有名でしたが、新聞は報じず、警察も検察も動きませんでした。それが今回、急に事件になったのは、病気で徳田さんの力が弱ったせいなのか、反対勢力が強くなったなのか、医療界の変化の反映なのか、司法界が突然目覚めたのか、いろいろと考えさせられます。
 選挙を別にすると、徳洲会グループの医療は質もよくなり、救急でも貢献しています。身内のピンハネを排し、職員の待遇がよくなればいいなと思っています。

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