田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(36)どこもかしこも偽装社会
ホテルや、ホテル内の料理店のメニュー偽装事件が、この2 、3 週間で急激に広がりました。文字通り「際限なし」の感じです。東京ディズニーリゾート、プリンス系、阪急阪神、リッツカールトン、帝国ホテル、近鉄系、JR系、京阪、東急系など、本当に軒並みのホテルが頭を下げました。私などはあまり行ったことのない高級店ばかりで、フーンと感心していただけですが、欧米にはどんな風に報道されているのかな、と心配しました。そのうえ、今度は少し身近な高島屋や三越伊勢丹などデパート内のお店に飛び火です。日本人である限り、偽装の網からは逃れられないようです。
一番多いのがエビの名前。中国料理では大きさだけで「芝エビ」「車エビ」「伊勢エビ」と分類していた、ということですから、元々いい加減なものだったわけです。ほとんど流通していない芝エビは単なる大きさでも、値段が3分の1 のブラックタイガーを使って車エビ表示は、やはり意図的といわれても仕方ないところです。そのうえ、ロブスターを伊勢エビと表示していた店にはびっくり。お客が気づかないほど小さく切って、濃厚な味付けだったのかな、と想像します。
ひどいと思うのは牛脂を注入したり、つなぎ合わせた成型肉をステーキなどと偽ったケースです。産地は単なる見栄や誤解の場合もあります。しかし、流通業者が、福島産や中国産を安く仕入れながら、秋田産、国産として高く売るのは許せません。「オーストラリア産・成型肉」を「和牛ステーキ」に格上げするのは二重偽装です。
今月になって、ヤマト運輸の「クール宅急便」の一部が常温下で扱われていたことが表に出ました。そうするとすぐに「チルドゆうパック」も同じと分かりました。低温流通を約束し、別料金を取りながらですから、相当悪質です。
業界ぐるみの偽装。ひょっとすると、いまの日本社会の特徴かも知れません。