医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年6月1日

(356)コロナでの経費増、減収に対応不可欠

 新型コロナのおかげで、大から小まで、おそらく全ての医療機関が深刻な経済的な影響を受けています。日本医師会、全国医学部長病院長会議、日本看護協会などの代表が 5月18日、安倍首相と面会し、医療現場の疲弊や苦悩を説明、支援を訴えました。
 同日提出された「全国大学病院への財務投入の要請書」によると、全国80大学病院では前年度に比べて約5000億円のマイナスと推計されます。
 今年 4月の手術件数は昨年 4月より約 1万 3000 件も減りました。コロナ患者対応のため集中治療室確保目的で手術制限し、院内感染防止のための外来診療や検査制限がありました。直接の費用でもあるウイルスのPCR検査費用もかさみました。検査費用は患者が陽性の時は保険支払いになりますが、陰性の場合は病院持ち出しのようです。手術前のエイズ検査のように職員の感染防止の狙いからも、おそらくほとんどの手術患者にはPCR検査がなされているのでしょう。陽性者が出た場合、接触した医師や看護師を一定期間休ませたりした場合にも予定していない負担増になります。
 日本病院会などの約4000病院の緊急調査でも今年 4月の収入は昨年 4月より10.5 %減で、利益は 1%からマイナス 9%の赤字になりました。病院の受診は外出自粛の対象外とはいっても、外出が危険だと毎日、テレビで注意されれば、新型コロナはいまの病気の何倍も危険そうです。いや、糖尿病や高血圧などの持病のある高齢者が感染すると死亡の可能性も高まります。外来患者、入院患者数ともに大きく減少したことが響きました。
 開業医団体の全国保険医団体連合会が 5月25日に公表した緊急アンケートでも86%の診療所では、今年 4月の保険診療収入が昨年 4月より減り、26%は減少率30%以上でした。7割が国や自治体の支援を要望、 6割が医療用マスク「在庫なし」「 1カ月以内」、 4割が防護服「在庫なし」でした。
 新型コロナでわかったように、医療機関は生活に欠かせない重要機関です。収束後の観光やイベントキャンペーンの前に病院・診療所の機能回復、機能充実が必要なことは、いくらボンクラな政府でもわかると思います。

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