田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(35)いいかげんな医療の露呈
「患者紹介ビジネス」が来年4月から規制されることになりそうです。中央社会保険医療協議会が先月30日の会議で厚生労働省の規制強化案を了承したとのことです。医師のブログで書かれ、国会質問もあった問題ですが、今年8月、『朝日新聞』が大きく報じてから進展しました。
そもそもは訪問診療の優遇政策です。医師が通院困難な患者の自宅を定期的に診療すると加算されますが、とくに月に2回以上行くと、概算で医師は月2万円以上の診察料が得られるとのことです。
厚生労働省は病院での医療から、できるだけ在宅での医療にシフトを移そうとしています。また、社会的には、急に具合が悪くなって知らない病院へ救急で入るよりも、日常的にかかっている「かかりつけ医」が好ましいと考えられています。これを合わせたのが、訪問診療でしょう。地方では高齢者の自宅はポツリポツリ散らばっていますから、訪問するといっても大変です。これを進めるには、報酬で優遇、というわけです。
一方で、有料老人ホームやグループホームなどの高齢者施設や、高齢者専用住宅が各地にできてきています。これらも「高齢者の自宅」に違いなく、しかも20人、30人、50人が隣接しています。これらをまとめて1人の医師に任せ、医療費の上前をはねよう、というのが患者紹介ビジネスです。斡旋業ばかりか、老人ホームがもちかけるケースもあるそうです。
日本の医療は形重視で中身を問わないので、数分で切り上げれば、1日で回れます。本来ならば2~3カ月に1度でいい訪問を月2回、押しつけるんだから「やあ、元気ですね」で十分。どうせ大半は保険から出るので、家族もうるさくいいません。保険医療は治す必要がないし、自分が知らない診療科の患者も適当に診てればいいし、薬も要らない患者さんにあれだけ処方してるんだから、もともといい加減なもの。何も知らなくても「かかりつけ医」は十分務まります・・。
ビジネス話に乗ったお医者さんはこんなふうに考えているのかな、と邪推したくなります。さて、対抗する厚生労働省はどんな有効な規制策を考えたのでしょうか。