医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年2月17日

(342)行き過ぎ司法に疑惑や懸念

 いまやニュースは新型コロナウイルス肺炎だけ。日本でもタクシー運転手や病院、クルーズ船で患者が次々に発生しているのだから無理もありません。でも、本当はほかにも重要な話がいくつもあるのではないか、と最近の新聞記事を見直します。
 年末からお正月に国中を沸かせた日産自動車の前会長カルロス・ゴーンさん。レバノンでの会見で、長時間の取り調べなど日本の司法制度を非難し、不正義な制度から逃れるには逃亡しかなかったと釈明しました。法務省や検察庁は会見で否定しているようですが、ゴーンさんの言い分にも理があります。恣意的な逮捕、長すぎる拘留期間、弁護士不在の取り調べ、しつような自白の強要、裁判官の有罪判決の多さ、など日本の司法制度の疑問はたしかに少なくありません。
 滋賀県の病院で人工呼吸器を外し、2003年に患者を殺しとして実刑判決を受けて服役した元看護助手(40)の再審が2月に終わり、3月に無罪判決が出る見込みです。医師は自然死の可能性も指摘していたのに検察は握りつぶし、弁護側にも知らせませんでした。元看護助手には知的障害があり、調べた警官に好意を抱き、求められるまましてもいない殺人を自白した、ということのようです。
 医療や介護では診療や生活の場で不足の事態が起き、患者の死亡につながることがしばしばあります。日本では突然、そうした事件で逮捕者が出て、業界と司法がギクシャクします。2006年2月に福島県の県立病院で産婦人科医が業務上過失致死傷罪などで逮捕されたのを思い出します。帝王切開を受けた産婦が死亡したのは2004年12月でした。結局は無罪になりましたが、乱用逮捕です。
 生後1カ月児を「揺さぶり死」させたと傷害致死罪に問われていた父親(43)に対し、東京地裁立川支部は2月7日、無罪判決を言い渡しました。虐待はなかったと妻が証言、本人も一貫して否定しているのに逮捕後、約2年間も拘留されていたとのことです。
 常識をわきまえている大人であるはずの警察や検察がなぜ、こんな事件で逮捕、起訴するのか、目的はどこにあるのかが本当に不思議です。

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