医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年2月10日

(341)新型ウイルス肺炎拡大の不手際

 新型コロナウイルス肺炎の流行もニュースも拡大中です。それにつれ、考えさせられることが増えています。第一は発症地の中国・武漢市の初期の対応です。最初の患者は昨年12月8日のようですが、27人の患者が公表されたのは12月31日でした。その前日、武漢中心病院の眼科医(33)が医師仲間のインターネット情報に「7人のSARS(重症呼吸器症候群)患者が隔離されている」と発信しており、おそらくこれがきっかけになったのでしょう。
 SARSでなかったわけですが、現場ではすでによく似たウイルス性肺炎と分かっており、多くの患者が出ていたと思われます。しかし、新年の行事予定もあり、市や政府は表ざたにせず、本格的な対策も遅れました。患者の急増ぶりからすると、ウイルス感染者はその間にどんどん増えていたと思われます。武漢を中心とした中国で死者が突出して多いのは病院の感染防止策や治療内容にも問題がありそうです。急増中の病院の大部屋のベッドが不気味でした。
 眼科医を含めた何人かの医師が「デマを流した」と処分され、自分も感染したこの眼科医は2月7日に亡くなったと報じられました。武漢市は人口1000万超と聞いて驚きましたが、2017年は重慶(3050万人)上海(2400万人)北京(2170万人)がトップ3で、1076万人の武漢は9位とあります。
 第二はクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号への日本政府の対応です。船内は人口密度が高く、行動範囲も限られます。感染初期は症状がなく、しかも人から人へと感染するウイルスならば広がるのが当然です。乗客だけでなく乗員でも感染者が出ています。
 最初から全員のウイルス検査をし、推移を見守れば医療的にも意味あるデータになりそうなのに、検査は一部集団の繰り返しでした。経費か手数か責任か風評か、感染者を少なくしたい意向が見え見えです。他のクルーズ船の寄港拒否、武漢からのチャーター便客の扱いなども、感染防止や乗客保護の感じがしません。国境がない感染症はまさに国際連携が基本です。東京オリンピックのためにも本気で中国を助けるべきでしょう。

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