医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年2月3日

(340)新型ウイルス肺炎はどの程度怖い?

 連日、新型コロナウイルス肺炎が大きなニュースになっています。武漢市など中国の患者が1万7000人、死者が360人を超え、海外26カ国では180人、うち日本人も20人、と急速に増えています。医療ジャーナリストと自称しているせいで、このごろ出かける会では新型肺炎について聞かれることが増えています。
 大きく報道されるほど関心や不安が高まるのは当然です。でも、報道というのはもともと未知の新しいもの好きで、しかも単純化、誇張する性質があります。99%の安全より1%の危険を重視し、問題が落ち着くまで集中豪雨式に情報を提示します。いまはまさにそうした状況下にあります。中国政府はじめ各国政府もそれに合わせてオタオタした対応ですから不安は増すばかりです。
 実はまったく同じような新型コロナウイルス肺炎が、同じように中国・広東省から出たのを思い出します。そのSARS(サーズ=重症呼吸器症候群)は何ともう17年も前の話でした。2002年11月から終息するまでの8カ月間に29カ国で約8100人が発症、774人が死亡しましたが、患者の66%、死者の45%が中国でした。ふつうは人間に感染しない動物のコロナウイルスが変異したと考えられています。
 先取りのニュースは治療薬の開発なども大きく扱います。でも、SARSはワクチンも治療薬もないまま、患者の隔離や防疫対策で収まりました。容体や死亡率から見ると、今回の新型肺炎はSARSより弱そうです。突然の強毒変異株出現といった希有なケースよりは沈静化する可能性が圧倒的に高いと思います。
 報道されないですが、インフルエンザがまだ流行しています。新型肺炎より感染率も高く、高齢者施設では何人も死者が出ています。肺炎は他の菌やウイルスでもなるし、食物を喉に詰まらる誤嚥性肺炎もあります。新型肺炎よりはこれら旧型肺炎の方がいまの日本人にとって圧倒的に危険です。また、世界では毎年、旧型の感染症の結核で170万人、マラリアで40万人が死亡しています。

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