医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年1月27日

(339)こんな医療が広がってほしい

 抗がん剤などの薬や栄養を取り込むのに使われる埋め込み機器があります。先日、その 話を聴いて、患者にとてもいい、すばらしい技術だと感銘を受けました。長寿になり、だれもががんを患う可能性のある時代、知っておく必要がある知識です。
 東京で 1月24日に開かれた医療セミナーは機器メーカーの日本BD(ベクトン・ディッキンソン)社が主催しました。登場した医師はイムス札幌消化器中央総合病院VADセンター長の岸宗佑さん。抗がん剤は飲み薬はわずかで大半は点滴で静脈に入れます。手足の血管に針を刺すと痛むし、すぐにボロボロになります。そこで針を刺すためのポート(本体部分)とカテーテル(管)からなるCVポート(皮下埋め込み型ポート)を手術で患者の胸などの皮下に埋め込みます。外からポートに針を刺して点滴します。少なくとも2000回は大丈夫というCVポート以外にも短期使用器具などがあり、これらを総称してVAD(血管内留置デバイス)と呼んでいます。
 ほとんどの病院では消化器外科医が手術し、消化器内科医が使います。岸さんは消化器内科医なのですが、患者の話を聞き、要望に応えようとするうちに簡略な手術法を思いつき、個々の患者に最適のVADを自ら埋め込む専門医になりました。
 消化器外科医が埋め込むCVポートは右胸皮下から鎖骨下静脈のルートです。この位置だと女性は胸の開く服が着れない、運転時にシートベルトがあたる、病気によって必要なうつ伏せ処置がしにくい、などで支障があります。岸さんは患者の日常生活を聞き、最も適した場所と静脈を考慮、ポートを腕や太股、腹壁などに設置します。まさに個々の患者に合わせたオーダーメイド医療です。
 岸さんはイムス札幌病院のほか、沖縄県那覇市の大浜第一病院でも埋め込み手術を引き受けています。そのCVポートに地元の病院で点滴してもらう患者も増えつつあります。
 「患者さんにはこういう埋め込み手術があることを知ってもらいたい。内科医でもできる手術なのでもっともっと広がってほしい」と、岸さんは話していました。

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