医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年1月22日

(338)日常診療で重要性増す漢方薬

 私が参加する新年恒例の行事の1つは日本医学ジャーナリスト協会の賀詞交歓会です。今年も昨日1月21日、重い荷物を持ちながら関西から直接会場に駆けつけました。日本東洋医学会の伊藤隆会長が講演をしてくださるというのが楽しみでした。
 伊藤さんは漢方の臨床や漢方薬の現状を具体的に話されました。病院での診療は病名に対応したいわゆる西洋医学ですが、漢方薬はそれを補う役割があります。気血を補って元気づけ、血流を改善して更年期障害などを治します。伊藤会長が診療されていた東京女子医大東洋医学研究所では、心療内科でのメンタルヘルス不調、婦人科、神経内科や整形外科での痛み、しびれ、ほてりなどで診療の半分を占めていたそうです。
 普通の薬と同じように保険で使えるため、医師の80%が漢方薬を処方しています。伊藤さんによれば、医師は漢方薬を通じて薬を大事に少なく使うことを学び、患者は自然治癒力に対する信頼を回復します。伊藤さんの同期医師の7割は漢方薬を変な目で見たのに、2001年から大学医学部で漢方薬の講義が始まったおかげで、若い医師は違和感を持たなくなりました。副作用などの話もありましたが、漢方薬が日常診療の中で重要さを増していることを印象づけられました。
 私は記者の時から漢方薬に関心を持ち、応援するつもりの記事も書いてきたのでよかったです。ただし、会員の多数は漢方薬にさほど詳しいわけではありません。次の機会があれば、なぜ漢方薬は有効なのか、西洋薬の評価法の限界、欧米の状況なども話してほしいものです。漢方薬が適切に用いられることが患者にいかに役立つか、西洋医学偏重のせいで症状が改善しない患者がどれだけ多いのか、医学に関わるジャーナリストたちは案外知らないのではないかと思うからです。
 いや、そう思うなら自分でもやるべきか、という声もします。今年は元気回復し、そういうテーマも仕事の1つにできるかも知れません。

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