医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2020年1月6日

(336)ゴーン前会長の日本脱出

 令和2年のお正月、明けましておめでとうございます。
 年末年始にかけてのニュースで驚いたのは何といっても、カルロス・ゴーン日産自動車前会長の日本脱出事件でした。
 元日付け『朝日新聞』によると、レバノンの国務相が31日、ゴーン前会長が合法的に入国したことをメディアに認めました。前会長の一族はレバノン出身で前会長自身も幼少期を過ごした国です。また、前会長は同日、「私はレバノンにいる」との声明文を発表、有罪を前提に差別が横行し、基本的人権を否定している日本の司法制度は国際法を無視していると非難し、この不正と政治的な迫害から逃れたと釈明しています。
 前会長は、2017年度までの8年分の報酬約 170億円のうち、未払い分約91億円を報告書 に記載しなかったとの金融商品取引法違反容疑で、2018年11月に逮捕されました。逮捕後の調べで友人や自分のために日産の資金42億円余を使ったとの会社法違反容疑が加わり、起訴されました。2019年4月、保釈金15億円を積んで拘置所から出て、監視・規制付きながら外出もできる生活に戻っていました。
 前会長は関西空港で箱に潜んで荷物として個人持ちのジェット機内に運ばれ、トルコを経てレバノンのベイルートに逃れたようです。トルコ人のパイロットらが逮捕されたり、米国の元軍人らの関与が噂されています。前会長が個々に契約・手配するのは難しく、何らかの協力機関がありそうです。「脱出費20億円でどうです」「10億円なら払うよ」なんてやり取りがあったかも。大金持ちはパスポートもレバノン、ブラジル、フランスと幾つも持っています。
 だから没収される保釈金15億円なんて安いもの。それにしても取締役会がある大企業で指摘のような高額出費が可能とは信じられないことで、しかも議決されていても法律違反になるのかどうか。官僚や政治家や企業経営者には特別に甘い日本の法律ではたいした罪にはならないのでは、との疑問も沸きます。それなのに逮捕後 5カ月も拘留するのは前会長主張の通り、いじめ嫌がらせ的な長期拘留が多い日本の司法制度の問題点を浮き彫りにしています。過去にはいくつものえん罪を生んでいます。
 いずれにせよ、今回の脱出劇は痛快といえば痛快です。アルセーヌ・ルパンの鮮やかさを思い出させてくれました。

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