田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(33)期限切れの薬は危ない?
10月初め、ヤフーショッピングで、使用期限が切れた市販薬が販売されていて、問題になりました。東京都の職員が見つけてヤフーに連絡し、ヤフーはページを削除しました。厚生労働省は、成分が変質する恐れもあるとして問題視しています。厚生労働省は現在策定中のネット販売のルールに、期限切れ薬の販売禁止規定を盛り込む方針です。
常識的にはこれでめでたし、めでたしなのでしょうが、私はちょっとひっかかります。記事を読んでみると、業者はちゃんと「使用期限切れ」と明示し、その分、価格を安くしていた、というのですから。
医学専門誌に開業医のぐち話が載っていました。新しい事務職員を雇ったら、張り切って事務室や戸棚を整理してくれました。医師が気づくと薬が大量に減っていました。「期限切れの薬は全部捨てました」。実は医師は、自分や家族、少ない入院患者さんにはそれを承知で使っていたので「もったいない」と嘆いたわけです。
薬の保管条件もいろいろですから、安全を見込んで期限はかなり短くなっています。 3年とか 5年となっていても、実際にはその倍も平気です。私の引き出しにも期限切れ 2年程度の錠剤や軟膏がありました。変質は目で確認できます。
食品の賞味期限も同様で、普通は食べられます。しかし、コンビニやスーパーでは期限切れや寸前食品を大量に破棄しています。日本の破棄食品だけで何千万人もが飢えずにすむ、と聞いて、心がうずきます。
ところで、国や都道府県が大量に備蓄しているインフルエンザ薬のタミフルが今年度に期限切れになり、 300億円がむだになる、と騒がれました。タミフルはカプセル薬ですが、普通の市販薬と変わらないように見えます。しかし、厚生労働省はメーカーからよい保管条件では変質はないとの報告を受け、今年 7月、使用期限を 3年間延長する処置を取りました。実は、タミフルの納入時、使用期限は 5年でしたが、今回と同じ事情で2008年に7年になり、今回10年に再延長されました。
使用期限の意味がわかっている国は、さすがにたいしたものです。