田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(324)公立・公的病院の再編とは
厚生労働省が病院の診療体制の見直しに着手したとのニュースが波紋を呼んでいます。9月26日、公立・公的病院の診療実績を分析し、4 分の1にあたる424病院は「再編や統合なども考慮して議論が必要」と判断したというものです。ずいぶん昔から指摘されてきたものの病院や自治体の意向任せに放置してきた厚労省の方針転換はいいとしても、患者置き去りの効率優先にならない工夫も大切です。
日本経済新聞によると、厚労省は1455病院を分析、高度の医療実績が少ない、近隣に代替できる民間病院がある、といった観点から公立257病院、日赤などの公的167病院を再編考慮対象とし、来秋までに対応方針を決めるよう都道府県に求めるようです。日本は入院過剰として医療財政面からも厚労省は急性期の病床減を進めています。しかし、公立病院の規模縮小や廃止は首長選の争点になりやすく、難しいことからの新たな対応策と見られます。
リストアップされた病院を眺めてみて、納得の半面、疑問もわきます。抜群に多いのは北海道、続いて新潟や宮城など。冬場を中心に事実上は慢性期患者の預かり先になっているのでしょう。
なぜか入院の率が極端に少ない病院は、離島だけでなく各地にあります。治療成績や応対が悪く、近隣病院との競争で負けているとすれば存続の意味はないのかも知れません。でも、ひょっとして、善意の医師がいて、できるだけ入院でなく外来で治療するという病院だったら、本当は素晴らしい病院なのかも、と思ってしまいます。
気になるのはリハビリや神経、リウマチなど病名のついた病院や、全国的に有名な特殊治療の病院がいくつか含まれていることです。最善の専門的治療をすることの評価が加味されているのか心配です。近隣民間病院の診療科に専門医がいるとは限りません。
公立・公的病院には収益を度外視して、民間病院にできない診療をする役割があるはずです。欧州諸国に比べると日本はもともと民間病院の率が高いのですが、厚労省はもっと増やしたいのでしょうか。