医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年9月30日

(323)ドイツ人の脱原発に感激


 知人に誘われて先日、映画「モルゲン、明日」を鑑賞し、坂田雅子監督の話を聞きました。世の中には偉い人たちがいるなあと改めて感心しました。
 ドイツの原子力発電反対運動がテーマの映画です。福島原発の事故を受けて、ドイツのメルケル首相が原発廃止を宣言しました。その時は、政治家のいわゆる人気取り政策かと思いました。おそらくはそれがきっかけで、坂田さんはカメラを抱えてドイツの各地を回ってインタビューし、市民の真剣な気持ちを映像化したのではないでしょうか。
 この映画で分かったのは、実は40年も前からドイツでは根強い原発反対運動があり、市民の反対で建設中止になった原発もあったということです。登場する市民の何人かは「みどりの党」の元議員や支持者でしたが、昔から環境保護を訴え、原発を危険視していました。そうした市民運動の原点は1968年からの学生運動、さらにその前のヒトラー独裁時代の反省があるようです。
 長野県須坂市で暮らす坂田さんの母親静子さんは自然保護に関心がありました。その彼女に1977年、イギリス人と結婚して英仏海峡の島に住む長女(坂田さんの姉)から運命的な手紙が届きました。対岸フランスの原発再処理工場からの放射能汚染、しかもその工場が日本の原発廃棄物の再処理を引き受ける…。娘に送るため反原発グループからもらった資料で原発や核の危険を実感しました。自分も何かしなければと、静子さんはガリ版刷りのチラシニュースを定期的に発行、知人に配って原発の危険を訴える活動に取り組みました。1998年に亡くなりましたが、彼女の訴えは『聞いてください脱原発への道しるべ』(オフィスエム)として出版されています。
 写真通信社で働いていた坂田さんは原発にはあまり関心がなかったそうですが、がんで亡くなったアメリカ人の夫がベトナムで浴びていた枯れ葉剤の映画制作を思い立ち、その過程で環境や農薬問題への関心を高めました。そして2011年、東日本大震災での福島原発事故で「母の心配が現実になった」と感じました。枯れ葉剤からの監督映画4作目は、母親の願いを実現しつつあるドイツ市民運動を取り上げることにしたわけです。
 ドイツでできる脱原発がなぜ日本でできないのでしょうか。企業幹部や政治家と違い、大多数の国民には裏金など回っていないのに。     

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