田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(321)2040年、人口減対策をどうする
公益財団法人医療科学研究所が主催するシンポジウムが9月13日に開かれました。毎年恒例の会のようですが、私はメディア関係の友人に誘われて初めて参加しました。テーマは「2040年問題に備える」で、座長の清家篤・日本私立学校振興共済事業団理事長ら6人が講演しました。
「2040年問題」としばしば耳にしますが、本当は私もよく理解しているわけではありませんでした。演者である研究者、厚労省政策統括官らによると、少子高齢化の加速で日本は人口減・高齢化が進み、2040年(令和22)年ごろに65歳以上の高齢者4000万人でピークになり、現在約6580万人の働き手が1000万人減って社会保障給付121兆円が1.6倍190兆円にも増える、どう対応しようかという話のようです。尾崎正直・高知県知事が過疎化、高齢化に地域住民ぐるみで取り組んでいる多彩な活動を報告したのが印象的でした。
社会が成り立たないほどの人口減なら、東南アジアから移民を迎えたらいいのに、と私は昔から思っていましたが、なぜかそれは話題になりませんでした。技能実習制度に新たな「特定技能」制度が加わりましたが、大半は移民政策とはいえないようです。
今月初め、法務省・厚労省は技能実習生に別作業をさせていた法令違反で日立製作所に改善命令を出しました。一部は報道ずみですが、経団連会長を出している同社の責任は重大です。すでに日産自動車、三菱自動車など日本を代表する企業も摘発ずみ。派遣社員や非正規雇用が日本人の若者を低賃金、不安定条件で働かせ、技能実習は外国人労働者を低賃金で一定期間こきつかう制度です。企業も政府も最初からそのつもりだったのは明らかです。
技能実習生は原則、定住を認めない制度なので、移民制度とはいえません。それを改善したかのような特定技能制度も、定住容認はまだ建設業などほんの一部だけです。
在日韓国人、在日中国人、ブラジルからの3世、4世などの多い地域はトラブルも絶えません。日本人同士でも変わり者を認めず、いじめる社会だけに、他民族への差別や偏見はなおさらです。そんな狭い意識を改めてみんな仲良し、若い外国人をやさしく迎え、働いて税金を納め、高齢者を支えてもらえば問題は解決するのではないでしょうか。
それができなければ、静かに消滅すればいいのです。