医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年9月9日

(320)認知症治療薬への疑問


 だれもが長生きできるようになったのはいいのですが、高齢になると増えるのが認知症です。厚労省研究班の推計では2012年に日本人では462万人、65歳以上の15%だったのが2025年には20%超の730万人にも増えるというのです。
 つい10年ほど前は、私は認知症とは無関係だと確信していました。ところが5年前に胃がんが見つかり胃を全摘してからは、肺炎や膀胱腫瘍なども体験してしまいました。免疫低下か薬のせいか、病気は仲間を呼ぶのでしょうか。さらにはよくいわれることですが、お世話になった先生のことを話していて、顔が浮かぶのに名前が出てこなくなるのも増えてきました。アイウエオ順になっている住所録を最初から調べて「ああ、○○先生だったなあ」と思い出す。こんなことでは認知症にならない80%に残れないかも、と不安になります。
 たまたま「認知症の根治薬相次ぐ開発中止」との記事(8月29日付け『朝日新聞』)が目につきました。今年になってノバルティス社やエーザイが相次いで認知症薬の臨床試験を中止したのですが、実は同じような運命をたどった根治薬候補はこの20年間で何と50以上にもなる、というのです。
 認知症の多くを占めるアルツハイマー病は、脳の神経細胞にたんぱく質「アミロイドベータ」が蓄積し、大脳や海馬の細胞を壊して発病する、というのがなぜか定説になっています。世界の製薬企業はこのアミロイドベータを予防したり、減らす作用のある根治薬の開発競争を展開してきました。
 松沢大樹・東北大学名誉教授の治療法を知ってから、私はアミロイドベータ説は間違いだろうと確信しています。松沢先生はうつ病、統合失調症、認知症をいずれも脳の扁桃体と海馬の萎縮で起こる同類の病気と考え、独自の治療を提示していましたが、定説一辺倒の精神科医や企業は無関心のまま現在に至っています。
 脳の萎縮がひどいのに認知症でない人がいます。短期間の運動や食事でたしかに認知症は改善しますし、環境急変で逆に症状が進むケースもあります。何年もかかって蓄積する一方のアミロイドが原因だと考えるほうが無理があるのではないでしょうか。

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