田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(309)「8050問題」の深刻
新聞やテレビで「8050問題」が重要なテーマになっています。先月28日の朝、川崎市多摩区の私立小学校のバス停で51歳の男性が子どもたちや親に包丁で切りつけ、2人を死なせ、18人をけがさせました。男性は80代のおじ、おば夫婦と暮らしていましたが、ほとんどひきこもり状態だったとのことです。ひきこもりといえば10代から20代の若者だった時代から30年も経って今や50代、親も80代というのが「8050」です。
元農水省次官も務めた70代の父親が事件の再発を恐れ、40代の息子を殺しました。隣接の小学校の音がうるさく、息子は「ぶっ殺してやる」と叫んでいたとのことです。家庭内暴力もあったと聞くと、父親の気持ちがわからなくもありません。
事件に先立ち内閣府は今年3月、40歳から64歳の「中高年ひきこもり」が全国に61万人もいるとの推計を発表、世の中を驚かせました。2015年の調査では15歳から39歳の「若年ひきこもり」が54万人と推計されています。ダブリを考慮しても、100万人以上もの人たちがひきこもっていることになります。
いろんなことが次々と浮かんできます。私たちが若いころは、ひきこもりなどできませんでした。家の中に自分だけがこもれる部屋などなかったからです。子どもは学校しか居場所がなく、不登校もごくまれ。いじめはありましたが、自殺は皆無でした。
親が朝から夜まで働いた結果、生活は豊かになり、自分の部屋、テレビやゲーム機、スマホが普及し、学校嫌いの子は1日中遊べるようになりました。親は子どもが暴れれば手をやき、黙認です。職場も学校と同じで面白くありません。親が毎日食事を出してくれれば働く必要もないわけです。
「8050」は昭和・平成時代の家庭、学校、社会の産物です。放任の家庭、いじめに気づいても何もしない学校、過労の職場、根っから不正な企業や政治が基盤になっていそうです。観察するだけなら、その先、令和時代も興味深いのですが・・・。