医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年4月22日

(302)事故多発車に問題はないのか


 4月19日の昼、東京・池袋で87歳男性の乗用車が暴走し、母子が死亡、 8人負傷の悲惨な事故が起きました。翌日の食事会で私が「高齢者の運転は怖いねえ」と切り出したところ、同席した 2人がいずれも事故を起こした車への疑問を話したのに驚きました。
 何十年も運転していない私は分からないのですが、テレビ画面から車はトヨタのハイブリット車「プリウス」で、最近の暴走事故ではそのプリウスが非常に多いのだそうです。
 「ネットでは話題になっているけれど、一般の新聞やテレビは、高齢ばかりを強調してほとんど車種に触れていない。広告のせいか、政府のせいか知らないけど」と、私の責任もあるかのように皮肉っぽくいわれてしまいました。
 池袋事故では信号を無視して150 メートルも暴走した間に、同乗の奥さんと「危ない。どうしたの」「どうしたんだろう」との会話があります。パニクッた高齢者の印象ですが息子への電話で「アクセルが戻らなかった」と話しています。警察が見るように「アクセルとブレーキを踏み間違った」以上にしっかりした感じがします。
 16年12月、福岡市の病院にタクシーが突っ込み、3人が死亡、7人が負傷しました。運転していたのはタクシー運転手で、まだ66歳。「ブレーキを踏み込んだが効かなかった」と一貫して主張したのですが、判決はアクセルとブレーキの踏み間違いと認定しました。池袋、福岡の事故の運転記録はいずれも運転手の主張に反していました。
 17年10月、武蔵野市で歩道に乗り上げ7人負傷の事故の運転手は85歳男性でしたが、この車にはちゃんと自動ブレーキによる衝突回避システムが付いていました。
 ネットで読んだ総合雑誌『選択』17年12月号の記事によると、こうしたプリウス暴走事故は16年1月以降、報道されたものだけで12件で突出しています。この記事の副題「トヨタも警察も解明しない深い闇」にグッと来ます。
 昨秋のインドネシア機、今春のエチオピア機と続いたボーイング737新型機の墜落事故とでは被害規模、複雑さは比較にならないとしても、コンピューターや機械の怖さを感じます。高齢者やそそっかしい人の運転ミス、と安易に片づけず、早急に技術的な点検をすべきです。

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