田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(30)増える川崎病、待たれる原因究明
今年の日本川崎病学会が 9月27、28両日、富山市で開かれました。実は富山は、私が高校時代までを過ごした故郷です。会頭の市田蕗子・准教授 (小児科) から声をかけていただいたこともあり、久しぶりに学会や故郷の雰囲気に浸ることができました。
川崎病は小児科医・川崎富作先生が初めて報告した原因不明の乳幼児の、しかも際立って日本人に多い病気です。高熱と発疹、首のリンパ節が腫れ、目が充血し、指先の皮がむける、といった特徴的な症状があります。一部に心臓異常の後遺症が残り、心筋こうそくで死亡する子どもが出ました。
川崎さんが初めて気づいてから52年、専門誌に報告した1967 (昭和42) 年からも46年もたちます。1982 (昭和57) 年、前年の2.4 倍という空前の大流行がありました。日本心臓財団が各分野の専門家を集めて原因究明に乗り出し、私は何度も川崎病の記事を書きました。ところが、今日にいたるまで、原因は分からず、ナゾの病気のままです。
学会初日に自治医大公衆衛生学教室から2年に1度の全国調査が発表されました。全国の病院の報告を集計すると、2011年は 12774人、2012年は 13917人の子どもが発症しました。2012年の患者数は1982年の15519 人に次ぐ史上2位、乳幼児に占める割合では史上最高記録を更新したとのことです。数年前からは「静かな大流行」状態です。発症率の高い県の隣県が翌年は高くなり、さらに翌年は周囲に広がるなど、何らかの感染症を疑わせる要素も見られるそうです。
治療法が進歩し、死亡の危険は少なくなりましたが、病気は何より予防です。会場でお会いしましたが、特定非営利活動法人日本川崎病研究センター理事長を務める川崎さんはもう88歳。お元気なうちに日本人研究者が原因を突き止め、予防できるようにしてほしいと願わずにはいられませんでした。