医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年3月25日

(298)人工透析中止の真相が知りたい

 医療に関係する話題で時々、テレビ局などからコメントを求められることがあります。 2、3時間の余裕があればいい方で、電話での即答も少なくありません。現役時代は「頭から爪先まで」どんな病気も取材しましたが、さすがに20年、30年と経つと新しい病気、新しい技術や薬ばかりです。「〇〇先生の治療」と言われると以前は顔が浮かんだのに、いまは孫世代、ひ孫世代のお医者さんたち。「専門の近いお医者さんにお聞きになったほうがいいですよ」とお断りすることが増えました。
 公立福生病院(東京都福生市)での人工透析中止問題もその1つです。3月7日の『毎日新聞』の特ダネ記事によると、診療所で約5年間、透析治療を受けていた腎臓病の女性(44)が昨年8月、透析用の血管(シャント)が詰まったため、公立福生病院を受診しました。担当の外科医(50)は首周辺に管を入れる治療法と合わせて透析中止の選択肢を提示しました。女性は「透析はもういやだ」と中止を選択し、意思確認書に署名し、女性は1週間後に亡くなりました。
 ところが女性は実は、入院中に苦しくなって透析再開を要望し、夫は病院に伝えたということです。同病院では他に2人が透析中止を選択、55歳男性も死亡しています。東京都が意思確認などが適切だったかどうか調査に入った、との内容でした。
 ひどい病院、ひどい医者、というのが最初の印象です。透析中止は死に直結します。一方、世界最高の透析技術を誇る日本は患者の寿命がどんどん延びています。まして女性は40代の若さ。何十年も人生が楽しめるはずなのに。
 鬼のような医者にとってどんな利益が、と考えて迷いました。給料は同じだが患者が少ないと楽だから? 医療費を減らせば保険財政の改善になるから? どんな医者か、どんな患者か知らずにコメントするのはSNSと同じだなあ。
 患者も個人差があります。全身どんな状態だったのでしょうか。終末期ではなかったのでしょうか。透析すれば苦しまずに生きられたのでしょうか。患者が亡くなれば病院の責任、医療事故と思い込んでいる家族も少なくありません。
 東京都や日本透析医学会が正確に調査結果を公表してほしいものです。

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