医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年3月18日

(297)若い女性の健康が国民の健康のもと

 3月16日の日本小児医療政策研究会 (衛藤義勝代表幹事) に参加しました。医師、看護師、栄養士、保育士ら小児医療従事者が行政や政治家に子どもの健全育成に役立つ政策を提言しようというユニークな研究会です。今年の世話人は大澤真木子・東京女子医大名誉教授 (小児科) と秋山千枝子・日本小児保健協会会長の女性2人とあって「女性の健康」がメインテーマでした。
 順天堂大学大学院の山城雄一郎特任教授 (小児科) によると、妊娠前、妊娠中の母体の状況が小児期だけでなく思春期、さらには次世代の健康にもつながります。日本の20代女性の20%が野菜、魚不足からのやせ過ぎで、低出生体重児が増えています。腸内細菌は消化吸収だけでなく、免疫力や脳機能にも関係していることが分かってきています。子どもは出産時に母親から腸内細菌をもらいますが、低出生児や帝王切開児はビフィズス菌が少ないなどの問題があるそうです。腸内細菌が脳の発達に影響するとの最近の研究に驚きました。
 東京医科歯科大学大学院の井関祥子教授、山口県総合医療センターの佐瀬正勝部長 (産科) のテーマは二分脊椎などの神経閉鎖障害でした。20年以上前から栄養素・葉酸摂取で減らせる「予防可能な先天異常」とわかり、海外では減っています。しかし、日本ではあまり知られず、野菜不足から増えているようです。サプリの普及ももう一つとか。「まず医療従事者が葉酸の重要性を認識し啓発を」との訴えです。
 このほか、通常は皮膚障害、重症になると発達遅延などにもつながる水溶性ビタミンのビオチン欠乏症、エネルギー代謝障害のカルニチン欠乏症も話題でした。また、女性に多く、高齢者の転倒の原因にもなる骨そしょう症の講演もありました。
 どの問題も専門家は重視し、学会や厚生労働省は基準を作ったり、啓発はしているものの国民にはなかなか伝わっていない、というのが現実です。骨そしょう症の予防にはカルシウムのほかに日光浴で増えるビタミンDも必要ですが、女性は逆に母子ともに「紫外線カット」傾向です。
 このごろはメディアがしっかりしないとと思うことばかりが多くて残念です。

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