医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年3月11日

(296)口先だけの国だから仕方ないか


 技能実習生制度。どの企業も百も承知で外国人を安くこき使って使い捨てにしている情けない実態がまたまた浮き彫りです。
 今月明るみに出たのは日立製作所とグループ企業です。国の監督機関である「外国人技能実習機構」が昨年に行った実地検査で、違法な働かせ方が判明し、同機構や法務省が改善勧告や改善指導をしていました。中西宏明・経団連会長の出身で、日本を代表する企業グループさえ制度の趣旨をまったく理解していなかったとは悲しいことです。昨年はゴーン前会長の日産自動車、三菱自動車も槍玉にあがっていました。
 外国人技能実習制度は開発途上国の若者に日本の進んだ技能や知識を伝え、母国で普及に努めてもらう建前です。対象職種は農漁業、食品加工、建設業などで、学ぶべき対象技術も決められています。
 しかし、実際には多くの企業は安く雇える労働者としか見ておらず、対象技術とは関係のない現場で単純労働に従事させていました。日立グループ会社で働くフィリピン人実習生は「電子回路基板への部品取り付け」のはずが、洗濯機のふたにプラスチック製部品を取り付ける作業でした。日産自動車や三菱自動車も、担当者は高度技術のある工場であれば別の軽作業でもいいと誤解していたと弁明、自分たちにない高度技術を教える計画書を出していた工場もありました。また、昨年夏には建設会社が実習生に除染作業をさせ、国から支給された手当てをピンはねしていたこともわかりました。
 ほとんどの実習生は母国の送り出し機関にお金を払っており、約束外の低賃金や長い労働時間で逃げ出しました。失踪する技能実習生は昨年半年で4000人を超えています。ベトナムからの実習生や留学生が6年間で80人も突然死や自殺で亡くなっているとの尼僧の話もありました。
 少し前までのニュースには、日本で数年働き、自宅を建て替えた、事業を起こしたという実習生らが登場しました。日本での働き方を一変させた人たちがいるはずです。法務省が彼らの責任を問うこともなく、違反企業を公表せずにこっそり指導しているのも問題です。いつまでも続くのは当然です。 

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