田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(295)長生きは口内きれいから
まだ時折、寒い日があります。出かける予定がないそんな日は、部屋を暖かくして「読書」です。「スマホ」でないのが年寄りの証拠、でしょうか。
偉い人がいるもんだ、と読みながら驚くことがままあります。『健口 長生きの秘密』(ごま書房新社)を送っていただいた歯科衛生士の精田紀代美さんもその1人です。何と私が育った富山県の出身です。
精田さんは高校を卒業して専門学校へ行き、歯科衛生士になりました。1年間歯科医院に勤務後は富山の保健所、最後は県庁で虫歯や歯周病予防を担当、しかし、現場に戻りたいとの気持から勤続30年、50歳で早期退職し、歯ブラシ屋を開業しました。歯ブラシは売れなかったのですが、歯の悩みを訴える人が次々に来ました。頼まれて養護学校や学校で歯みがき法を教えるうちに独特の口腔ケア技術を開発、歯科衛生士を対象に研修事業を始めます。2009年、介護施設から口腔ケア指導を頼まれました。職員の疲労、不足から簡略化し、歯ブラシとタンクリーナー (舌ブラシ) での「口腔ケア週2回法」をマニュアル化しました。舌の掃除で唾液が増え、飲み込みやすくし、味もよくなります。その結果、指導した10施設が数年で誤嚥性肺炎ゼロになりました。学会で報告し、これが報道され、精田さんは時の人になったわけです。
この本でいくつものことを知りました。日本人は砂糖消費量は世界で2番目に少なく、世界一歯をみがく国民なのに、虫歯保有率は世界トップクラスだというのです。歯みがきは毎日何度も、しかも長いほどよい、という日本人の常識は正しいのでしょうか。
歯ブラシを回転させるようみがく昔の「ローリング法」の老人の歯がきれいなことから、精田さんは歯科衛生士が指導している今のみがき方がよくないと感じています。また、昔は朝、起きてすぐうがいや歯みがきをしていましたが、いまは食後にみがくよう教えら
れています。口内に一番細菌が多い朝、そのまま朝食を食べるのは、それこそ誤嚥性肺炎になりやすそうです。
私はまず、起きてすぐの歯みがきと舌ブラシを取り入れました。