医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年2月12日

(292)統計はうそのもと、でしたね

 厚生労働省の「毎月勤労統計」が話題を続けています。本来は全数調査にすべき東京都内の大手事業所を3分の1抽出調査にしたことで数字が変わり、さまざまな影響が出たという事件です。私は先月、職員の単純な手抜きではないかと推測しましたが、それから1カ月経っても真相は闇のなか。検証を調査するのも厚労省幹部が監視し、職員が聞き取るというのでは、あたかも沈黙を強制しているかに見えます。問題が発覚してからの対応もお粗末でした。大臣などへの報告も遅れ、新年度予算案の組み直しなどの手間も増えてました。厚労省に限らないのでしょうが、お役人は自分たちのしていることをなるだけ知らせないとの方針でまとまっているようです。
 アベノミクス効果で好景気が続いていると政府は強調していますが、国民の実感は乏しいようです。私もずっと以前から「ホンマかいな」と疑問でした。修正した2018年の実質賃金も「プラス0.2 %」説 (政府) と、「マイナス0.4 %」説 (野党) が国会で真っ向から対決するそうです。論戦を期待はしますが、結果にかかわりなく政府議案が圧倒的な与党の賛成で決着してしまうとわかっていると気分が乗らないのも事実です。
 『統計でウソをつく法』という昔のベストセラー本を思い出します。内容は忘れましたが、統計がいかにだましの道具になっているかの啓発でした。正しい統計でさえそうですから、インチキ数字ならなおさらです。とくに医療関係は、何百倍もの量を動物に与えて発がん物質としたり、少ない人数に短期間食べさせ、何かの数値の変化から心臓病を予防すると結論づけたりと、ウソ統計だらけでした。それも国や大学の研究者が堂々と発表しました。「こんな記事は不要では」とデスクに言っても「他紙に載るから、うちも載せないと」といった調子でした。
 『朝日新聞』の編集委員コラムに、つい先日の施政方針演説で安倍首相が成果として示した「ひとり親家庭の大学進学率が24%から42%に上昇した」も政策とは無縁との指摘がありました。私の場合ですが、ニュース扱いを拒否されて、後日、自分のコラムで皮肉っぽく書いたことを思い出しました。

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