田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(288)またまたごまかし厚労省
本当にお役人たち、どうしたんでしょう。またまたのごまかしが厚生労働省で発覚しました。「毎月勤労統計」の調査を本来の手順で行わず手抜きし、そのために雇用保険や労災保険で数百億円もの追加払いが必要になったというから、またまた驚きです。それも2004年から始まったことだというのですから。
厚労省が毎月、都道府県を通じ勤労者の賃金や労働時間を調べます。本来はすべての事業所を対象にしたいところですが、手数の問題もあり、常勤 500人以上の事業所は全数、それ以下は一定のサンプル抽出です。実態できるだけ正確に反映するよう都道府県ごとにサンプル数も決めてあるのでしょう。それを厚労省は大手事業所が約1400と一番多い東京都で約500事業所だけを抽出した名簿を都に渡していました。
その頃のやり取りが浮かびます。「毎月面倒だよね。大手だってサンプルでいいんじゃないの。結果はたいして変わらないよ」「僕らの仕事もいろいろ増えて忙しい。偉い人は自分でやらないから、国会で質問されると、ハイうちでやります、調べますだからたまったもんじゃない」「3回に1回に減れば都庁も助かる」「グッドアイデアだね」。
賃金の高い大手事業所の数が減っている分、全体の平均賃金は下がります。数字を下げる目的というより現場の仕事減らしだったのでしょう。調査結果がどのように使われ、何に影響するなんてことは他の担当者の話でどうでもいいことです。
厚労省は昨年、大阪、愛知、神奈川でも大手事業所を抽出制にすると通知をしていました。まさに確信犯です。対象を減らしても変わらないとの認識だったことがわかります。しかも、それが指摘されて後、今の担当者は抽出をごまかすよう修正を試みていたというおまけも付きました。
なぜこうしたことが起きたのかの検証が注目です。とはいえ、おそらくはうやむやになるでしょう。当事者は「14年も前のことなので記憶にない。覚えていない」と言い、その上の人も「報告を受けたかどうか覚えていない」はずだからです。
そういえば、障害者雇用者数の水増しは企業がごまかせば罰則がつくのにお役人はおとがめなし。あれも誰が始めて誰が広げたか謎のままでした。今回の調査も企業がごまかし回答をすると罰せられるとか。お役人は強いです。