医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2018年12月4日

(283)なかなか減らない医療事故

 「医療過誤原告の会」主催のシンポジウムが12月2日の日曜日に東京で開かれました。医療訴訟を提起した被害者が1991年10月に立ち上げた会ですが、準備段階から支援してきた関係で参加しました。27年間で医療技術は飛躍的に進み、制度もかなり改革されましたが、残念ながら医療事故の防止、対応、救済はさほど進んでいない印象です。
 「画像診断書・がん見落とし」がシンポジウムのテーマでした。CT検査などで放射線科医ががんの疑いを指摘していたのに主治医が気づかず、見落とすといったケースが16年以降、大学病院やがんセンター病院で続発しました。実は、慈恵医大病院で見落とされ17年2月に亡くなったAさんが会の役員でした。奥さんが別の大学病院で医療事故に会い、訴訟で和解した方です。今度はその本人が…と私も驚きました。
 4人のシンポジストの先頭は宮脇正和会長で、Aさんの事故の経過や、大学病院の対応などを報告しました。メディアに知人が多かったことから報道されたものの、見落としがあっても被害者の多くは正確な事実を知らされず、患者側弁護士も消極的で、事故が知られない現実を指摘しました。
 続いて慈恵医大病院医療安全管理部の海渡健・副部長が再発防止のため、報告書を主治医が読んだことをチェックするシステムを作り、画像診断書などは原則として患者に渡すなどの対策を説明しました。それでも起こりうる事故を防ぐためには患者が積極的に発言、要求してほしいとの要望も加えました。NHK解説委員、厚生労働省の2人も含め全員が、チーム医療への患者の参加を訴えました。
 その通りですね。さらにもっと根本にあるのは、医師・病院任せをいいことに、質を問わない医療がまかり通っていることです。シンポジウムの前に、3件の医療訴訟の会員報告がありましたが、著名病院がガイドラインにもある必要な安全策を取っていなかったり、数カ月前と同じ事故を繰り返したりしていました。安全は医療がどんなにしても守らねばならない基準であるはずです。

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