医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2018年11月19日

(281)がんに負けない、医者にまけない

 公益財団法人日本対がん協会が設立されたのは1958 (昭和33)年8月です。日本癌学会が提唱し、私の古巣の朝日新聞社が創立80周年記念事業として支援して発足しました。がんは死亡原因の2位とはいえ、脳卒中がダントツの時代でした。がん予防のため、検診の重要性を紙面でも強調しました。
 その対がん協会60周年記念講演会が11月11日、東京・朝日ホールでありました。垣添忠生会長の講演、患者代表も参加したパネルディスカッションなど多彩な内容でしたが、私には瀬戸内寂聴さんのビデオメッセージ、なかにし礼さんの記念講演が新鮮でした。
 作家の瀬戸内さんは4年前、92歳で胆のうがん手術を受けました。それからは次々にいろんな病気になっています。でも、心明るく、笑顔を心がけているとのことです。「不機嫌な顔は不幸招く」「自分の気持ちが病気を誘い込む」「人をほめてニコニコ顔を引き出そう」「好きなことを見つけよう」といった言葉が心に残ります。胃がん手術後、食事が楽しみにくく、ついつい不機嫌顔になりがちな我が身を反省、です。
 作家・作詞家なかにしさんは2012年、胃カメラで食道がんが見つかりました。手術を勧められましたが「神の手」を求めて退院。 3つの病院の医師を怒らせたそうです。いい治療法がないかとネットで探し、「陽子線治療」を知りました。2つの病院のうち、担当医が連絡電話番号を公表している病院を「患者に親切」と考えて選びました。陽子線治療の2年後に再発、最後の手段として期待薄の抗がん剤治療をしたところ劇的に効いて医師を驚かせました。
 治療の途中で書きたい小説を執筆しました。また、「医者任せにしない」治療を描いた著書がすでに出版されているそうですが、読んでいなかった私はすごいドラマにびっくりです。「残りの人生でよいことをしたい」なかにしさんの話も、瀬戸内さんの話と通じるところがありそうです。

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