田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(270)インチキ底無し、障害者の雇用でも
公文書廃棄、ねつ造、ウソ答弁などで国民をあきれ返らせた省庁の官僚の不正がまたまた明るみに出ました。障害者雇用者数の水増しです。世界に誇る日本の自動車メーカーの同じような検査不正が次々に公表され、世界を驚かせたのもつい最近ですが、それと同様で多くの省庁や機関が水増しをしていたのですから、開いた口がふさがりません。
政府は追い詰められて8月28日、再調査結果を公表しました。国や自治体、企業には、従業員の一定割合以上の障害者を雇うよう義務づけられています。この法定雇用率を下回った企業は原則1人当たり月額5万円の納付が求められます。
昨年6月時点で国の33機関が雇用していた障害者は約6900人で、32機関が当時の法定雇用率2.3%を超えていたとされていました。ところが、今回の再調査では半数の3460人が水増し分で、何と27機関が法定雇用率に達していませんでした。厚生労働省の規定では原則として障害者手帳類を持っている人が障害者ですが、そうでない軽い障害や病気のある人を数えていたようです。水増しが多かったのは国税庁、国土交通省、法務省、防衛省、財務省の順でした。一方で、厚生労働省、警察庁、金融庁、内閣法制局など雇用率に達していました。報道では参議院や国会図書館などの国会機関、都道府県の多くも見習って水増しをしています。
これだけ多くの機関の同じような不正が偶然とは考えにくいものです。企業に雇用を強制する以上、自分たちもとしている素振りを示す必要があり、上のだれかが「手帳がなくてもいいから」と言い、それをお手本に広がった可能性もありそうです。官庁は民間の法律や条件違反には厳しいのに、自分や仲間うちに甘いのは昔からです。企業に対しては3年に1度、手帳の有無などを確認する監査が行われているとのことですが、省庁にはありませんでした。
こういう流れになると、その監査の正確度も気になります。中小企業には厳しいけれど有力な大企業には甘くして、法定雇用率を守っていなくても目こぼしされ、納付金も要求されていない、などといったことはないでしょうね。