医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年9月9日

(27)東京五輪の誘致成功

 元気になるニュースですね。9月9日未明、2020年のオリンピック開催地が東京に決まりました。私はおそらくはスペインのマドリードかな、と予想していたので、朝、一番のテレビを見てちょっとびっくりしました。しかも、1 回目の投票で94票中42票、決戦投票で60対36票でトルコ・イスタンブールに圧勝した、という内容です。
 東京のマイナス点はもちろん福島第一原発の事故です。8月に入り、汚染水の処理が不十分なことが次々に露呈してきました。原発はまだ燃えていて、毎日冷却水を回して冷やしています。そればかりか地下水が原発の下に流れ込み、漏れた汚染水と混じり合っています。一部はそれをくみ上げてタンクにためているが、一部は海に流れ出ている、というのです。原発敷地はいつの間にか、タンクだらけになっています。
 原発はいつになったら廃炉になるのでしょうか。東京は福島のすぐ近く。7年後のオリンピックが本当に開けるのかどうかと、だれも不安を感じます。IOC総会に集まったメディアから東京への質問は、圧倒的に原発問題でした。
 原発の処理は、東電まかせでよいはずはなく、国が乗り出すのは当然です。日本の存亡に関わる、これほど大きな課題はないからです。安倍首相はきっぱりと、私がちゃんとやる式に断言し、日本の環境、食品とも安全を強調しました。とはいえ、特別な根拠があるともいえず、私にはそれで世界の人たちが安心するとはとても思えませんでした。
 いま考えてみると、東京が抜きんでていたのは経済的な強みでした。IOC委員は企業人が多いようですし、貴族的な階層です。オリンピックを楽しみ、IOCの発展や自分たちの存在を高めるには経済的な要素が重要です。メディアの記者ほどは、もともと原発事故などを気にしていなかったのでしょう。
 ローマやパリもその次の開催を狙っているそうです。欧州での連続開催はないので、マドリードが選ばれるとまずいとの判断もあったようです。これからのオリンピックは設備と経済力のある、2回目、3回目の大都市の持ち回りになるかも知れません。

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