医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2018年1月15日

(238)破格の優遇スパコンベンチャー

 時代が進むにつれ、世の中は複雑怪奇になる一方です。報道記事を読んでもなかなか理解できない事件、も増えました。たとえば、東京地検特捜部が昨年12月に着手した「スパコン詐欺事件」です。
 スパコン開発のベンチャー企業ペジー社の経営者は、国の「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から約4億円の助成金をだまし取った疑いで逮捕されました。NEDOは2013年、経費の3分の2までを助成するベンチャー対象事業を開始、ペジー社は高性能メモリーを開発したとして約5億円を得ましたが、地検によるとその経費が大きく水増しされていました。
 その後の分も含めるとNEDOの同社への助成決定額は約35億円にも達し、しかも初回が会社設立わずか半年後、というのは驚きです。そのうえ、国の別組織、科学技術振興機構(JST)から60億円の無利子融資も決まっていました。普通は民間よりも国の方が形式やそれまでの実績にこだわるのですが。
 難しいと感じるのは、どこが何億円の価値なのか、スパコンの性能がよく理解できないからかも知れません。医療分野の研究でも、遺伝子や分子、原子、電子と、近年は難解なものが増えました。将来性はあるにしても、現実性に乏しいものばかり。私も何度かそんな立場を経験しましたが、審査する研究者も少し離れた分野は評価困難です。信頼できる専門家の推挙があれば、よく分からない研究にも安心して高評価をつけられます。いや専門家でなくても著名人や偉い人の推挙なら同じかも知れません。
 週刊誌報道では経営者と密着した人物として安倍首相や政府官僚と非常に親しいフリー記者が登場します。暴行されたと被害者女性が訴えたのに警視庁が動かなかったという記者です。ペジー社は記者を世話しており、政府がこの記者を通じて税金を優先的に流した可能性があります。しぼんでしまった森友・加計学園事件に似ていて、もっと露骨です。東京地検が性急に事件化した印象があるのは、実はかなりのタレ込みを得ている可能性があります。それだと今後の展開に注目です。
 日本の検察や警察がいつも正義とは限りませんが、時には気骨あるところを見せてほしいものです。

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