田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(220)広がる糖質抑制メニュー
テレビや新聞で美味しそうな刺し身や寿司の写真が目を引きました。大手の回転ずしチェーンが 8月31日から、酢飯を使わない野菜巻き、麺抜きの野菜麺、ご飯の量を減らした握り寿司などの糖質抑制メニューを用意するとのニュースです。外食業界ではすでに牛丼のご飯をコンニャク麺に変えたり、ご飯抜き定食などのメニューを出しているところもあるそうです。糖質制限食がようやく日常生活の場に降りてきたんだと、時代の変化を感じました。
京都・高雄病院理事長の江部康二さんの著『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』が東洋経済新報社から出版されたのは2005年 1月でした。糖尿病は血液中の糖分が多いため、全身の血管が傷つく病気です。内科医で患者でもある江部さんは糖質制限でたしかに糖尿病が改善することを確認し、病院でも実践していました。朝日新聞の医療担当編集委員だった私は何度か紹介しようとしたのですが、あまりにも異端な説だと思われ、07年春までまったく記事に扱ってもらえませんでした。その頃すでに江部さんは、糖尿病患者のために糖質の少ない食品がスーパーなどで販売されたり、外食メニューが充実する必要性を強調され、「いろいろな店や業者に働きかけているが、なかなかうまくいかない」と嘆かれていたのを思い出します。
私も一時期、糖質制限を試みて、日本の昼食があまりにも糖質過多になっているのに驚きました。ご飯の大盛り定食、パン、具のほとんどない麺やパスタ、さらにはラーメンライスまで、ふつうの外食メニューは糖質が中心で、食べるものがないのです。日本人は外国人に比べて肥満が少ないのに糖尿病が多いのは、長年の糖質過多で膵臓が過労になり、高血糖、糖尿病へと進むのではないか、と思っています。
江部さんはすでに何十冊もの著書を出版され、普及に努めていらっしゃるのはすごいことです。そのほか、実際に試した医師、患者の著書もたくさん出ており、そのほとんどが率直に効果を認めています。初期の糖尿病では血糖降下剤も要らなくなり、国の医療費も減らせます。それなのに、日本糖尿病学会や専門医がいまだに低カロリー食を患者に勧め、糖質制限食についても「長期に続けると問題が起きかねない」などと説明していることがとても不思議です。