田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(218)「どこの国の総理か」疑問は当然
月遅れの梅雨なのか、東京は雨の日が目立ちます。今年のお盆前後は旅行しなかったので、屋内で子どもたちの家族とゆっくり、かつ騒がしく過ごしました。
8月となるとテレビや新聞には原爆、終戦の報道であふれます。戦後の平和が72年も続いたことは素晴らしいことで、毎年、同じような紋切り型の記念行事がくり返されてきましたが、今年は雰囲気がやや違いました。
第一に北朝鮮と米国の威嚇合戦です。金委員長、トランプ大統領とも根っから好戦的で危なっかしい。そのうえに安倍首相です。加盟193カ国のうち122が賛成し、7月に採択された国連の核兵器禁止条約に日本が参加しなかったのには驚きました。唯一の被爆国日本が、米国、ロシアなど核保有国に同調したのです。米国の核の傘で守ってもらう必要があるからとか、核の保有国と非保有国の対立を深めるだけだから、などとの言い訳だと、核兵器の根絶は永遠に不可能です。過去の自民党の首相も決して問題なしとはいえませんが、こんな決断は戦争も原爆も知らない世代の首相の登場まで、だれにもできなかったことでしょう。
広島、長崎の被爆者が反発するのは当然です。長崎市での会合で被爆者代表が首相に「あなたはどこの国の総理ですか」と詰問したというのもうなづけます。
式典の挨拶で首相は「『核兵器のない世界』を実現するためには、核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要。我が国は、双方に働きかけを行うことを通じて、国際社会を主導していく」と述べたとのことですが、これらの言葉は加計学園での答弁同様、白々しく聞こえます。巨大な軍備を持ち、他の国々よりも強いと自負する核保有国が、自らの影響力や立場を弱める核の放棄・排除を、簡単に認めるはずがありません。どこの国の総理かよく分からない方がトランプ大統領に追随し、この平和を断ち切るようなことがないようにと、ただただ祈るばかりです。