医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2017年8月8日

(217)事故・トラブル多い「サ高住」住宅

 新聞の見出しの「サ高住」に、このごろようやく慣れてきました。「サービス付き高齢者向け住宅」が長いからと略した言葉で、WHOとかUNICEFとか、英語の組織名の頭文字を並べたようなものです。要介護認定を受けた人や60歳以上の人を対象にした賃貸住宅で、毎日の安否確認や生活相談を義務づける代わりに、建築に際して業者は国からの補助金、税の優遇措置が受けられます。
 サ高住での事故が多いと指摘した『朝日新聞』記事は今年5月でした。全国約21万戸を監督する114の都道府県・市のうち97自治体の回答を集計しました。2015年1月から16年8月までに3362件の事故があり、4割が骨折だったとのことです。病気でない死亡は147件。誤えん、自殺、入浴、転落、死因不明といった内訳です。多いのかどうかはよく分かりませんが、15年8月、大阪市のサ高住で82歳の女性が死後4日で見つかりました。1日1回は安否確認するはずが実際はそうでない証拠です。
 サ高住は自立した高齢者向け住宅の前提でできた制度です。介護保険で訪問介護は受けられますが、あくまで住宅です。しかし、特別養護老人ホームの不足から、ホーム代わりに利用されています。『朝日』記事では入居者の 9割が要介護認定者で、要介護3以上の重度な人たちが3割にもなっていました。夜間は職員がいないところも多く、重度の要介護者の世話は所詮は無理なのです。それなのに要介護者も入居できるとした国土交通省・厚生労働省は介護施設を民間に安く作らせようとしたのでしょう。
 7月25日付け『毎日新聞』にもサ高住の記事がありました。厚労省調べでは15年に介護報酬の不正請求で指定取り消しなどの処分を受けた事業所の3割がサ高住併設だったとのことです。併設は数%なので、ざっと数倍の高率ということになります。
 補助金などで有利とサ高住が増えていますが、参入する業者の多くは介護や福祉と無縁です。国も国なら民間も民間、といった感じです。

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