田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(215)施設で死なすことの不条理
こんなことがなぜ起こるのか、どう考えても分からない事件がこのところ立て続けに報道されています。最近の新聞記事は一報段階では不十分なことが多く、私の印象からすると、読んでも頭のなかで再現できないケースが少なくないので、あるいはそのせいかも知れないのですが。
弱い子どもや障害者を施設が安易に扱っています。つい先日、埼玉県上尾市の障害福祉サービス事業所の送迎車内で19歳男性が熱中症で死亡しました。もう1つは2015年8月ですが、岩手県盛岡市の保育施設で1歳の女児が食塩中毒死したケースです。
送迎のワゴン車は7月13日午前9時ごろ、施設に着きました。重い知的障害があった男性は3列の座席の最後列の右側に座っていました。運転手が見守るか手助けをして、利用者は次々降りたのですが、最後の 1人を降ろし忘れ、 6時間以上経って気づきました。忙しい日で対応は運転手任せでした。施設内では昼食時などに男性がいないことに気づいていた職員もいたようですが、そのままになっていました。
監督、管理のいい加減な施設であることは問題です。そのうえ、ですが、降ろし忘れること自体が不思議です。男性が小柄で座席の影で見えず、発声できないとしても、たった3列の車内です。点呼確認まではともかく、運転手は忘れ物や汚れ、破損などがないか、その都度、全座席をチェックするのが普通ではないでしょうか。
とはいえ1年前の7月には栃木県で、父親が保育園に送り届けて出社するつもりが忘れて会社に直行、車内に置き去りされた 2歳男児が熱中症で死亡する事件がありました。わが子でもそうですから、まして他人は…なのでしょうか。
記事によると、乳児は小さじ一杯の食塩で死亡の危険があるそうですが、今月に逮捕された経営者は飲み物に食塩を入れて飲ませました。乳児にミルク、でなくて塩水、などは聞いたことがありません。乳児は嫌がったはず。わざとでないとすれば、何のために、の疑問が広がります。