田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(214)簡裁は英断、連合は不可解判断
前回、思わず嘆いた広告最大手・電通の事件で予想外の展開がありました。東京地検が電通を略式起訴で済まそうとしたところ、東京簡易裁判所が「不相当」と判断し、法廷で審理されることになったのです。その一方、長時間労働をさらに助長すると懸念されている「高度プロフェッショナル制度」では一貫して反対していた連合が、突然、政府寄りの容認に転じました。世の中複雑で、何が何だかわからない時代ですよね。
管理職を不起訴処分にし、企業の電通に形式的に罰金を課すだけの略式起訴とは、地検の対応はあまりにも政府寄りすぎです。これに対し、簡裁の判断は当然で、常識にかなっています。法廷で実態が少しでも明らかになってほしいです。とはいえ、今回の簡裁の英断で、地検や背後の法務省の面子は潰されました。信念を持つ簡裁判事の今後も気がかりです。
高度プロフェッショナル制度は労働基準法を改正し、高収入の特別な専門職には割り増し賃金を払わずに残業や休日労働を求められるようにする制度です。労働組合側の強固な反対で暗礁に乗り上げていたのを、連合が解決に動いたことになります。
デザイナーや技術者、研究者など限られたごく一部の人だけなら、企業がそれを望む個人と契約すればいいことです。経営者が法律を求めるのは、大きな利益が期待できるからでしょう。望まない人にも強制することがたやすくなります。そうして企業は名前だけの専門職を増やし、対象を広げます。最初は例外だった派遣社員がいつの間にかどんな仕事でもできるようになり、若い世代の低賃金、未婚、少子化が進むという想定外の事態を生みました。
狭い日本の社会ではどこかの分野で幹部や著名になれば、お友だちになる機会がいくらもあります。議員仲間は政党を超えて親密になります。下っぱの銀行員や会社員は敵対していても、頭取や社長は同じ団体の役員だし、飲み仲間、ゴルフ仲間です。組合の幹部は経営陣と親密で、何割かは役員に登用されます。ごく一部を除けば、とても仲良しで平和な日本が見えます。