田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(210)どうなる受動喫煙防止策
とても残念なことですが、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の国会提出が見送られました。塩崎恭久厚生労働大臣が6月16日の閣議後の会見で発表しました。
世界保健機関 (WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピック開催都市に対し、受動喫煙防止のために屋内禁煙を原則とし、罰則付きの法律を作るよう求めています。2020年の東京オリンピックを前に、厚労省は昨年10月、人の集まる施設や店では原則屋内禁煙とする案(たたき台)を公表しました。
国会で法律が通るためには、圧倒的多数である与党の支持が不可欠です。そのために、法案を自民党部会、総務会などへ示し、あらかじめ了承を得る「与党審査」と呼ばれる手続きがあります。自民党には、日本たばこ産業と親しい議員、財源としてたばこ税を重視する議員、愛煙家など、いろいろな議員がいます。海外や国内一部地域での調査では影響は少ないとされていますが、禁煙による売り上げ減を心配する飲食店の声を重視している議員もいます。
その結果、厚労省案には多くの議員が反対し、自民党は、喫煙や分煙などの表示をすれば喫煙を認めるべきだと主張しました。そこで、厚労省は小規模なバーやスナックなどは喫煙を認める、など条件を緩めた妥協案を示して自民党の了解を得ようとしました。世界的に見れば、最低レベルの対策です。しかし、それも会期終了目前まで調整がつかず、時間切れで次期国会を目ざすしかなくなった、というわけです。
その次期国会ではどうなるのでしょうか。このような手続きがある限り、結論は大きく変わらない感じがします。ただし、7月2日投票の東京都議選では、自民党を含めてほぼ全部の政党が東京都の受動喫煙条例制定を公約に掲げるとされ、東京都内だけはIOCの意向に沿って禁煙、はできそうです。それに続いて、最近の政治状況からは、安倍首相の鶴の一声で与党審査が逆転パス、となる可能性もありそうですかね。