田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(189)文科省ぐるみの天下り事件
新年早々、文部科学省で天下り事件が発覚し、大騒動になっています。内閣府の再就職等監視委員会は1月20日、国家公務員法に反し、文科省が組織的に天下りをあっせんしていたとの調査結果を公表しました。同日、文科省は前川喜平事務次官ら関係幹部の懲戒処分を発表し、閣議では同次官の更迭人事も発令されました。
大学政策担当の高等教育局長が2015年8月に退職し、10月に早稲田大学教授に招かれました。早い再就職に疑問を持った委員会が調べたところ、文科省人事課が履歴書を送ったり、面談のあっせんをしたことがわかりました。しかも、同課は委員会の調査に虚偽回答を用意、早大に口裏合わせを頼んでいたというのです。当時は審議官だった前川次官はこの事件を含む2件に関与、当時の次官、当時と現在の人事課幹部が停職や減給になりました。委員会によると、疑わしい事例は30件前後もあるとのことで、組織化、常態化していたようです。
天下りの代わりに官庁が企業に大きな利益を配分するといった「官製談合」は昔から行われていました。まれに事件として発覚すると、対策がたてられます。公務員の求職活動やあっせんを禁止する国家公務員法の改正が07年、何と皮肉なことに第1次安倍内閣時代だったそうです。それに伴ってできた監視委員会はこれまで4省庁8件の違反を指摘していますが、今回ほど組織ぐるみがはっきりしていませんでした。
80年代後半か90年代前半ごろは、私もたまに厚生省 (当時) に出入りしました。親しい官僚から「省の大臣官房長 (総務の最高責任者) の最大の仕事は先輩の天下り先を用意すること」と聞いたのを思い出します。既存団体のポスト獲得だけでなく、検査や管理組織を新設します。次官交代で新次官の同期生が退職する古くからの慣習を遵守するためで、その周囲の何人かの官僚も天下りました。天下った官僚は事業契約や情報が土産です。
素早い処分で政府は天下りは文科省だけの問題としたい様子です。官僚や政治家の質はむしろ下がっている感じですから、文科省以外はないなんてとても信じ難いことです。国会論議でどんな新事実が飛び出すのでしょうか。