田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(184)長時間労働はなくならない
大手広告会社・電通の新入女性社員 (24歳) が昨年末、自殺したことから長時間労働が大きな話題になっています。 1カ月の時間外労働は105時間もあり、三田労働基準監督署が今年9月、長時間の過重労働が原因の労働災害と認定しました。私はパワハラもあっただろうと思っていますが、女性は友人たちに「死にたい」とメールしていたそうです。これがきっかけで、厚生労働省は11月上旬、労働基準法違反の疑いで電通本社、支社を捜索しました。
長時間労働は電通に限らず、日本の多くの企業ではごく普通のことです。労働時間は週40時間、1日8時間までと、労基法で定められているそうですが、日本の多くの法律は抜け穴を用意しています。労基法36条に基づき、企業と労働組合が協定 (「36 (さぶろく) 協定」) を結び、労基署に届ければ制限がほぼ撤廃できます。さらに業種によって、あるいは「特別の事情」があれば、完全に撤廃することも可能です。12月1日付『朝日新聞』によると、全国の事業場の55%、大企業の事業場の94%で36協定が結ばれています。見事ですね、大部分が例外扱いなのです。電通はその手続きを怠っていただけ、のような感じもします。
厚労省は14年に、企業に残業が必要な理由を聞きました。「客の不規則な要望に対応」(44%) 、「業務量が多い」 (43%) 、「仕事の繁閑の差が大きい」 (40%) 、「人員不足」 (31%) の順でした。明らかに仕事量に比べて人員が少ない。企業は最少限の人員を配置し必要に応じ長時間働かせる方針だということです。目的はもちろんコスト削減でしょう。
他の企業がそうしているからうちも、そうしないと利益が出ない、と業界全体、企業全体が、同じ方向に流れていきます。多くの職場も長時間労働が常識になっており、早く帰ったり、休みが多い人はつまはじきされます。派遣社員がどんどん増え、就職も不安定な最近の状況下では、逆らうことはなかなか難しいことです。