医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2016年11月28日

(182)介護施設は外国人労働者ばかりに

 低賃金で人手不足の介護職は外国人低賃金労働者に任せる、という時代がいよいよやってきます。国会で審議中の法改正で、来年から外国人技能実習制度の分野に「介護」が加わることになるからです。現在は経済連携協定(EPA)で、インドネシア、フィリピン、ベトナムから看護師、介護福祉士の研修生を受け入れ、国家試験合格、その後の永住をめざす制度がありますが、条件も厳しく、狭き門です。それが今回、一挙に条件がゆるまります。
 1993年に始まった技能実習制度は日本の技術を学び、故国で役立ててもらう国際貢献事業、ということになっています。農漁業、建設、食品製造、繊維など現在の62職種に介護が追加されます。日本の多くの制度は建前と本音は別で、技能実習制度も、産業界の要望に応えて低賃金労働者の確保が目的です。ですから対象者は資格も経験も不要です。募集企業側も低賃金の単純労働を要求するので、過労や事故などが問題になっています。また、対象者も稼ぎ目的で、悪質な仲介機関に多額の礼金を払って日本に来る、といったケースも少なくなく、よりよい稼ぎを求めて失踪するといった事件も起きています。
 一方、介護施設の何割かは、もともと介護とは無縁の事業家が稼ぎ目的で経営しています。国からの支払いが減り、もうからないと見ればすぐにも撤退しかねません。いつの間にかアジア系の店員ばかりのコンビニや飲食店が増えたように、介護施設もいずれ、わずかな日本人管理職のもとで長時間働く、外国人介護助手ばかりになるでしょう。
 3国からの介護福祉士の受け入れは、もともと少人数のうえ、国家試験の合格率が高くなく、合格しても日本の長時間労働などを嫌っての帰国が多いのが現実です。簡単に介護助手が雇えるようになれば、経済連携協定は早晩、存在意義を失います。
 法改正に伴って、国は「外国人技能実習機構」を新設し、違法な低賃金での長時間労働をさせないなど監督を強化するとしています。しかし、多数の企業が参画する事業の監督はどの分野でも失敗しています。新しい機構も天下り先である以上の役が果たせるかどうか、はなはだ疑問です。

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