田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(181)あとを絶たない、いじめ自殺
いじめられた子どもの自殺、が後を絶ちません。11月7日付の新聞には「きもい」「死ね」などと言われ、8月に自殺した青森市の女子中学生の記事がありました。また、16日付には原発事故で横浜市に避難、いじめから不登校になった小学生の手記が公表されました。少子化で子どもの価値が高まっている時代、本当に悲しく、残念なことです。
学校でのいじめをなくすため、地方自治体や学校の責務を定めた「いじめ防止対策推進法」が2013年から施行されています。しかし、現状は改善されず、有識者会議が10月24日、「自殺予防、いじめ対策を、教職員の最優先業務と位置づける」「いじめの認知件数の少ない都道府県に文部科学省が指導する」「学校のいじめ対策組織に弁護士や元警官など外部の人を参加させる」などを文部科学省に提言しました。
前にも書いたはずですが、日本は子どもだけでなく、大人社会も官民あげてのいじめ社会です。大多数と違う考えや強い個性、才能などが目立つと、学校や職場、組織、地域などの集団から疎外されます。そうした意識がなくても、リーダーに大多数が追随することで、いじめが成立します。
安倍首相や菅官房長官が当選直後の翁長沖縄県知事の面会を拒否したのも、明らかにいじめですが、とくに批判はありませんでした。米国で働いた後、厚生省(現・厚生労働省)に途中入省した故・宮本政於氏は著書『お役所の掟』で、省内でいかに徹底していじめられたかをこと細かに書いています。90年代は国の組織そのものが堂々といじめをしていました。
私の記者の頃には、学校職員の間でもいじめがありました。校長や教頭の気に入らない教師には余分な仕事を押しつけ、書類不備と文句をつけたと自慢話を聞きました。職員がいじめあっていては、生徒を叱れませんが、今はどうなったのでしょうか。
女子新入社員が過労自殺で、電通の長時間残業が話題になっています。しかし、自殺にまで至るのは、激務よりも上司のパワハラと周囲の黙認、つまり、いじめではないのでしょうか。電通に立ち入り調査したのは宮本氏をいじめていた厚労省です。
職場、社会のいじめ指向がなくならないのに、学校だけはいじめをなくす、といったことが可能かどうか、疑問に思っています。