医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年7月4日

(18)子宮頸がんワクチンの推奨中止

  子宮頸がんワクチンの副作用が予想外の問題になっています。ごく一部ながら激しい痛みの後遺症が出ており、厚生労働省は6月14日、接種の推奨を控える通知を出しました。「ワクチン後進国」脱出策の目玉ワクチンの1つだっただけに、関係者は複雑な思いではないでしょうか。
 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)のうちのいくつかが原因と分かっています。HPVはだれもが感染しますが、9割の女性は免疫力で排除し、1割ほどの女性の子宮に住み着き、さらにその一部に子宮頸がんを起こします。その予防策として世界的にワクチンが導入され、日本でも2009年に認可され、今年4月からは小学校6年から高校1年の女子が対象に、公費助成がある定期接種に格上げされたばかりです。しかし、昨年あたりから、接種後の全身の激しい痛みで、登校もできない、ほとんど寝たきりという深刻なケースが出ており、今年3月には被害者の会が発足しました。厚生労働省の検討会によると、これまで328万人に接種され、1968件の副作用があり、重いのが43件もあるそうです。検討会は「さらに調査が必要」とし、接種を推奨しないことになりました。
 ふしぎなことに欧米ではこうした報道がありませんでした。製造工場や工程など製品の違いなのか、それとも日本人の遺伝子の関係か、今後の追究が待たれます。
 それにしても、子宮頸がんワクチンは当初から疑問がありました。小児の多くのワクチンの目的は病気の予防のほか、地域や国全体の感染症の防止や根絶があります。しかし、子宮頸がんワクチンは本人のがん予防だけ。それも危険性があるのは1割だけです。
 子宮頸がんを起こすHPVは何種類もあり、今のワクチンで防げるのは6割程度で、欧米でもがん検診との併用が原則になっています。その子宮頸がん検診は欧米に比べると極めて低いのが日本です。一方、がん検診をきちんとやれば、ワクチンを打たなくても子宮頸がんによる死亡は防げます。
 この機会にもう一度、子宮頸がんワクチンの必要性をじっくりと検討してみるのがいいと思います。    

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