田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(179)叙勲、とってもおめでたいけれど
11月3日付の新聞はたくさんの名前であふれていました。春、秋の恒例の叙勲の発表です。よく知っている先生も何人か含まれています。
勲章はお年寄りにとって何物にも代えがたい贈り物のようです。「いやあ、思わぬことで」といいながら、祝賀会ではニコニコ、本当にうれしそうです。
勲章には位があります。この秋では一番上の「桐花大綬章」が江田五月・元参院議長でした。ちなみに上の人たちの肩書を見ると、元最高裁判事、元大臣、一流企業の元社長、元事務次官、元長官、元知事、元検事正、元判事、元大使、国立大学名誉教授、元市長、元県議・市議などと続きます。
勲章は「国家または公共に対し功労のある者」に与えられます。三権の長である国会の議長、首相、最高裁長官、各省大臣らが候補者を推薦し、内閣が選ぶ形ですが、実際にはほとんどが各省庁の推薦で決まっています。
民主主義の基本は「三権分立」といわれますが、日本は事実上、行政が司法、立法を抑え込んでいます。「国家または公共」とは国民全般のように見えますが、実はお役所・お役人にとって「国家または公共」とは自分たちのことです。記者仲間では「勲章とは役所に忠誠を尽くしたごほうび」といわれていました。
お役人はなかなか表に出れず、裏方で苦労します。お役人が一番叙勲したいのは自分たちですから、省庁は役所の先輩を一番に推薦します。大学教官のほとんどは、文部科学省関係の国立大学に長く在籍した人たちで、研究や業績とは関係ありません。次はいろんな場面で協力してくれた政治家、守ってくれた検察や裁判官です。
省庁が社会を動かすには民間の協力が要です。政策に反抗的な異端者を抑えるための半行政的組織が、経団連はじめ、医師会、病院会などの業界団体です。通常は著名企業の創業者や社長というだけでは勲章がもらえません。新聞社はずっと勲章とは無縁だったのですが、ある時期以降は、朝日新聞の社長が日本新聞協会会長に就任すると、「これで勲章がもらえる」と幹部が大喜びするようになりました。「困ったことだ」と飲み会で話題になったことを思い出しました。