田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(174)責任者が分からない不思議
サスペンスドラマのような面白さ、わくわく感が続いています。例の豊洲市場の盛り土問題です。9月30日、記者会見した小池百合子・東京都知事は調査チームの報告書を説明し「責任者を特定することは難しい」と話しました。しかし、どう考えてもそれですむはずがありません。
2年間の地下水調査で安全性を確認したうえで築地から豊洲へ移転することになっていました。11月18日に最後の検査があり、結果は来年1月中旬に出ます。ところが移転は11月7日に決まっていた、というのはだれが聞いてもおかしなことで、小池知事が延期を決めたのは当然です。専門家会議は有害土壌からの汚染対策として、全敷地の土地をある程度削ったうえ、盛り土をすべしと提言しました。ところが、知事の延期決定の後で、実際は建物の床下には盛り土がなく、地下空間になっていたことが発覚しました。しかも公式には建物の下も盛り土をしたというウソ発表がずっと続いていました。
その原因を探る都の調査では、盛り土なしは08年の技術部門での内部検討から、13年2月の設計完了までの間に徐々に固まっていったもので、責任者は特定できなかったというのです。お役人の身内防衛習性とはいえ、あきれ返って言葉も出ないですね。
汚染対策をする土木系職員は全体の盛り土を当然と考え、建物を作る建築系職員は配管などのスペースとして地下空間が必要と考えていたそうです。民間の設計会社が勝手に地下空間を描いたのでなければ、交渉役の建築系の幹部が指示したのは明白です。おそらく建築系幹部は汚染の防止に盛り土が不可欠とか、役立つとは露ほども考えてもいなかったのでしょう。専門家会議も土木系職員も市場関係者向けのポーズとして盛り土を出しているといった認識だったのではないでしょうか。
それにしても、都庁クラブの新聞・テレビ記者が、これだけ大がかりなごまかしに全く気づいていなかったとしたらショックだし、メディア関係者としても恥ずかしい。幹部や知事の発表をそのまま書くだけだったわけですから。