田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(171)築地市場の移転どうなる
今年11月に予定されていた築地市場移転・豊洲市場開場が土壇場で暗礁に乗り上げています。雲行きが怪しくなってきたのは東京都の舛添前知事の突然の退陣、それに代わる小池百合子新知事の誕生からです。私の旧勤務先の朝日新聞は築地市場の隣組で、時々は市場関係者の話がもれ聞こえてきます。小池知事の就任直後から「移転は延期になりそうだ」との噂でしたが、8月、正式に延期が発表されました。
施設の老朽化、拡張の必要から築地市場を豊洲に移転することが決まってから10数年になります。豊洲市場の予定地は東京ガスの工場跡地で地下水や土壌に高濃度のベンゼンやヒ素などが含まれていたために、その対策が必要でした。このため当初の2012年が延び延びになり、最終的には2016年11月7日、となっていました。
小池知事が延期を決めた理由の1つは豊洲市場の安全性の確認のため、でした。地下水調査を2年間行うことになっていて、その最後の検査が始まるのが11月18日で結果は2017年1月中旬の予定とのことです。これまで環境基準値をクリアしていたから当然大丈夫だろうとの見切り移転に待ったをかけることにしたようです。
前知事時代までの東京都はできる限り早く移転しようとの、移転至上主義でした。いわれれば確かに変です。万一、1月に汚染が分かった時はどうするのでしょうか。異常値が出ても桁外れは考えにくい。「安全率を見込んだ数値なので、この程度では危険はない。すでに移転も終わっており、これ以上の対応は難しい」ですますのでしょう。
そのうえ9月10日の会見で、小池知事は豊洲市場の盛り土が東京都の発表通りでなかったことを明らかにしました。都は全域で汚染地盤を2メートル削り、その上に4.5メートルの盛り土をしたと説明していましたが、実は建物の下は配管などを通す必要からコンクリートで囲った空間になっていて、盛り土はしませんでした。
放射能対策ではないので盛り土がなくても安全性は変わらないとは思われますが、都が故意に間違った説明・発表をしてきたことは明らかです。ひどい話です。これだと地下水や土壌の安全も本当だろうか、測定値をごまかしていないのだろうかと疑われます。