田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(17)いじめ対策基本法の効果は?
「いじめ対策基本法」が 6月21日に成立しました。いじめの早期発見や防止のための組織を設置することが学校に義務づけられます。また、相談窓口の設置や道徳教育の充実、なんてのもあるそうです。
今から40年前、朝日新聞学芸部の時代、女子中学生の自殺を取材しました。原因はいじめでしたが、そんな程度で死ぬなんて、と驚きました。私の子どものころもいじめは結構ありました。しかし、いじめられる側はさほど深刻に受け止めておらず、自殺などはありませんでした。
本当のところ、なぜ子どもたちは自殺するのでしょうか。兄弟や家族が減り、日常生活の世界が極めて狭くなり、学校の仲間がほとんどすべてになっています。そこで仲間外れになることは存在感が否定されることでもあり、大変な恐怖なのでしょう。「村八分」という言葉があるように、日本人は昔から横並び主義で、個性を認めない社会です。障害や遅れ、変わった行動や感覚は目立ちます。
一方、弱いものいじめは楽しみの1つ、面白くない時のうさ晴らしの手段です。部長は課長を、課長は社員を叱りつけます。すると社員は奥さんに、奥さんは子どもにあたり、子どもは犬をいじめるというあの流れです。ある本に「つまらない仕事だからいじめでもしてないとやってられませんよ」というパート主婦の話がありました。
学校でいじめが多いのは、児童・生徒が楽しくないからだと思います。個性や違いを尊重せず、成績・進学一辺倒の日本の教育が間違っています。それを正さずに問題が解決するとはとても思えません。
先生方も大変です。昔は子どもたちと遊ぶのが仕事でしたが、今は遊ぶどころか、じっくり観察する時間もないのです。子どもたちの仲間に入らず、いじめや異常のサインに気づくはずがありません。せめて、いじめ防止会議がさらに先生方の仕事を増やし、ますます目が届かなくなって逆効果、にならないよう願いたいものです。