田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(165)障害者施設での殺人事件の不可思議
相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」の悲劇には心底から驚きました。26歳の元職員が7月26日未明に侵入、ナイフで刺して19人を殺し、26人を傷つけました。とても日本で起きたとは思えない事件です。
報道では、おかしなことの連続です。容疑者は今年1月ごろから、「障害者は生きる意味がない」と発言するなど、不穏な言動が目立つようになり、やまゆり園は警察や相模原市に相談しました。今年2月、容疑者は突然、衆議院議長公邸を訪ね、今回の事件を示唆する障害者抹殺計画を書いた手紙を渡したそうです。「私は障害者470人を抹殺できる」などと書き、施設の名前、自分の住所や氏名も書いていました。結束バンドで職員の自由を奪うことなど、今回の事件通りの行動計画も入っています。
やまゆり園は2月に容疑者を退職させました。また、人を傷つける可能性があると考えた相模原市は精神保健福祉法に基づき、容疑者を精神科に措置入院させました。病院は症状が改善されたとして翌3月、容疑者を退院させました。そうして今回の事件です。
議長に犯罪計画の手紙を出したり、施設での言動など、容疑者の行動は明らかに常識を超えています。一方で、周囲の対応も疑問です。議長からは警察や園にどのように連絡したのでしょうか。客観的に見て、かなり特異で危険度が高い容疑者ですが、警察は、園付近の警戒や、容疑者の監視などをしなかったのでしょうか。市は退院した容疑者のフォローはしていたのでしょうか。
「事件が起きてから」が警察の仕事だとよくいわれます。しかし、国民の要求は事件の予防にも広がっています。何度も相談しながら、ストーカーに殺された事件が各地で起きて、警察への不信が増しています。
病院の判断も疑問です。容疑者はおそらく精神を病んでいます。精神科医は患者の言い分だけでの診断で、科学的な根拠がありませんから、元々あてにはなりません。
犯罪計画が漏れても、警察の対応や各機関間の連絡不備のため防げませんでした。そう考えると、やっぱり日本だから起きた事件かな、という気もしてきます。