田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(164) テロは間違いイラク攻撃のせい
忘れる間もなく悲劇が続いています。7月22日、ドイツ・ミュンヘンのショッピングセンターで起きた銃乱射事件で若い人たち9人が亡くなりました。7月1日にはバングラディシュの首都ダッカで、日本人7人を含む20人が犠牲になったばかりです。バングラの発展を願っていた国際協力機構(JICA)関係者とのことで胸が傷みます。6月はトルコ・イスタンブールの空港と米フロリダのナイトクラブ、3月はベルギー・ブリュッセルの空港でした。いずれも、過激派組織のイスラム国 (IS)に忠誠を誓ったり、賛同の若者による自爆覚悟の銃撃・爆発です。こんなくり返し、だれがどうしたら終わってくれるのでしょうか。
始まりに関しては貴重なニュースがありました。7月6日、英国の調査委員会がイラク戦争の経緯をまとめた報告書を公表したのです。2003年に米英などがイラクを武力攻撃しフセイン政権を倒しました。主な理由はフセイン政権が大量の破壊兵器を保有、生物兵器の開発も進めているとの米情報機関の報告で、兵器がテロリストの手に渡るのを防ぐことも狙いとされました。ブッシュ・米大統領にブレア・英首相が協力しました。2009年に英国政府が作った調査委員会は、当時の情報は誤ったもので、ブレア政権の開戦に根拠はなかった、と結論づけています。
10万人以上のイラク国民が亡くなり、政権残党や反米団体からイスラム国が生まれました。戦乱は13年も続き、戦渦は年々拡大し、世界中でテロリストが暴れています。イラク戦争が予防するはずの世界の混乱が、まさにイラク戦争によって始まったのですから、これ以上の皮肉はありません。
その元になった間違い情報は本当に単なる間違いだったのか、戦争好きの米国軍人幹部が自己満足のために手を加えたのか、何年に一度は古い兵器を使い切って更新させたい軍事産業が仕組んだことなのか、までは調査委員会は言及していないようです。
それにしても、間違えた米国情報機関は何の責任も問われず、これからも安心して間違えられそうです。無条件で米国政権を支持した日本政府もとくに反省はない様子です。ただし、こうした調査に踏み切った英国政府はたいしたものです。